2014820日広島市豪雨災害(土砂災害)調査結果

2015/11月10日第4版

九州大学大学院 農学研究院 森林保全学研究室

 

2014年8月20日未明の集中豪雨により、広島市に生じた土砂災害について

調査や追加調査を行いましたので4版として報告します。

独自の災害現地調査を実施しました。)

 

内容に関しては、さらに調査・解析を必要とするものもあり、変更する場合があります。ご了解ください。

 

 

広島市安佐南区八木町細野における土石流流出と損壊した細野神社(正面参道)、八木3丁目(梅林小学校上流)における土石流流出と損壊した家屋(後述)

(細野神社における発生前の状況はGoogleのストリートビユーで確認できます。境内は原形を留めていません。)

     八木町細野南.jpg

1)広島市安佐南区八木町細野における土石流流出端(左岸側、第2参道)、上流の土石流流下痕跡、かろうじて残った細野神社社殿、八木町細野南住宅上流の復旧工事

@  流下痕の測量結果から計算すると、この土石流の『流速』は谷の出口では9.6m/s(約35km/hr.)、『最大深さ』7.5m程度と考えられる。

神社上流の「渓流幅」は約19m、「渓床勾配」は約12.4度、A下流の「堆積勾配」は約3度、B「流木」はコナラやクスノキなど広葉樹ばかりで胸高直径0.3~0.8m

C「流出最大礫」は花崗岩類で正面鳥居部分では最大直径0.8m程度であった。D「発生源の斜面傾斜」は約30度(tanθ=0.588)。

E堆積下端まで大礫や岩塊で埋め尽くされる。F「等価摩擦係数(流下垂直距離÷流下水平距離で流下末端からの見通し勾配)」は約0.397

G細野南側地区渓流の宅地最上流での勾配は約8度で流下幅約60m

 

 

   

  

2)広島市安佐南区八木3丁目における上流の谷と土石流流下痕および土石流流出と損壊した家屋、

(町内の光廣神社には水害を示唆する伝説も残る!この神社本殿は高台にあり無傷。)

@  流下痕の測量結果から計算すると、この土石流の『流速』は谷の出口では14.2m/s(約51km/hr.)、『最大深さ』4.7m程度と考えられる。

谷出口(34.48314°N132.49168°E)の直上流「渓流幅」は約17.4m、「渓床勾配」は約17度、

住宅地での勾配は7.5~12度、流下幅25m、下流の「堆積勾配」は約3.5度〜5度、A「発生源の斜面傾斜」は約34度(tanθ=0.682)。

B「流木」はコナラやクスノキなど広葉樹がほとんどで、胸高直径0.160.8m、おおよそ12本に1本の率で針葉樹(ヒノキ、スギ)が混じる。

C流出最大礫は花崗岩類で最大直径3m程度であった。岩塊は住宅地にも多数到達している。

D等価摩擦係数(流下垂直距離÷流下水平距離)は約0.286

 

  

3)広島市安佐南区八木3丁目(県営緑が丘住宅上流)における土石流流出と損壊した家屋、上流の谷と土石流流下痕

@  湾曲部流下痕の測量結果から計算すると、この土石流の『流速』は谷の出口直上流では14.6m/s(約52km/hr.)、最大深さ3.6m程度と考えられる。

谷出口(34.48259°N132.48721°E)の直上流「渓流幅」は約27m、「渓床勾配」は約13度、住宅地での勾配は6~11度、流下幅44m

A「発生源の斜面傾斜」は約30度。流木は広葉樹がほとんどで.流出最大礫は花崗岩類で最大直径4m程度であった。岩塊は住宅地にも多数到達している。

B等価摩擦係数(流下垂直距離÷流下水平距離)は0.340

 

 

4)広島市安佐南区八木4丁目八木の里団地上流における土石流流出と損壊した堰堤

@  流下痕測量結果から計算すると、この土石流の『流速』は堰堤下流の住宅地直上流では16m/s(約57.6km/hr.)、

最大深さ5.1m程度と考えられる。「渓床勾配」は約16度、

A「発生源の斜面傾斜」は約35。流木は広葉樹とスギがほとんど。流出最大礫は付加体堆積岩類で最大直径3m程度であった。

B等価摩擦係数(流下垂直距離÷流下水平距離)は約0.365(途中に堰堤あり)

C堰堤1基を乗り越えて寺院(34.48855°N132.49578°E)や住宅地に流下。

 

阿武の里団地下.jpg 阿武の里団地谷出口.jpg

5)広島市安佐南区八木4丁目阿武の里団地上流における土石流流出状況と谷出口

@流下痕測量結果から計算すると、この土石流の『流速』は上流谷出口では4.16m/s(約15km/hr.)、

最大深さ3.6m程度と考えられる。「渓床勾配」は約20度、

A等価摩擦係数(流下垂直距離÷流下水平距離)は約0.345

B宅地最上流部での流下勾配は約12度。

 

 

6)広島市安佐南区緑井8丁目における土石流渓流出口付近と上流部

@流下痕測量結果から計算すると、この土石流の『流速』は住宅地直上流では3.27m/s(約11km/hr)と計算できるが、カーブ上流では

18.7m/s(約67km/hr.)であった可能性もある。最大深さ5m程度程度と考えられる。「渓床勾配」は約14度、

A「発生源の斜面傾斜」は約28度。流木は広葉樹がほとんど。流出最大礫は最大直径3m程度であった。

B価摩擦係数(流下垂直距離÷流下水平距離)は約0.270

 

       

7)広島市安佐北区・可部6丁目における土石流流出と被災状況

@流下痕測量結果から計算すると、この土石流の『流速』は谷出口では2.872.74m/s(約10km/hr)程度と考えられるが、

崩壊部に近い上流カーブでは20m/s(約73km/hr.)〜25.3m/sの可能性もある、最大深さ6.5m程度と考えられる。「渓床勾配」は約13度、

A「発生源の斜面傾斜」は約41度(中側の土石流)。流木は広葉樹とスギがほとんど。流出最大礫は流紋岩類で最大直径2.5m程度であった。

B等価摩擦係数(流下垂直距離÷流下水平距離)は約0.242(北側の土石流)〜0.415(中側の土石流)。

 

  

(a)                   (b)                         (c)

8)広島市安佐南区「渡場」((a))における土石流流出と「柳瀬地区」崩壊(土石流: (b),(c)

@「渡場」では、流下痕の測量結果から計算すると、この土石流の『流速』は谷の出口直上流では3.7m/s(約13.3km/hr.)、最大深さ1.8m程度と考えられる。

谷出口(34.50955°N132.50350°E)の直上流「渓流幅」は約14m、「渓床勾配」は約11度、

A柳瀬崩壊の「発生源の斜面傾斜」は(b)が約28度、(c)が約29度。流木は広葉樹がほとんどであった。

B柳瀬崩壊の等価摩擦係数(流下垂直距離÷流下水平距離)は、(b)が約0.554(c)0.440

 

*           気象条件: 太平洋高気圧縁辺流(高気圧周りの時計回りの上空の風)と東シナ海からの西風による水蒸気収束

および(秋雨前線に関連する)上空の寒気の組み合わせから生じたバックビルディング型線状降水が原因の集中豪雨が記録的な大雨をもたらしたと考えられる。

(最大101mm/hr3時間で200mm以上。)

*        植 生:八木地区はシラカシやコナラなどの広葉樹林(a)がほとんどで、八木4丁目下流一部などにスギ林(b)がある。可部6丁目も下流部はスギ林があるが、広葉樹類が多い(c)

*        現地植生の根系強度・根系密度計測と土質強度試験結果および崩壊事例のFEM斜面安定解析からは、このシラカシ林の斜面補強程度はスギ林などと比べて多少良かった結果となっている。

    

(a)                                            (b)                    (C

  

 ここで述べる数値などはポータブルレーザー測距儀、デジタル・クリノメター、GPSなどを用い、現地で計測したものですが、土石流到達範囲などは地形解析で求めたものもあります。

 今後も調査・研究が進めば、その結果は順次改訂する予定です。

 

以上です。

 

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