インドネシア・スラウェシ(Sulawesi)島南部の
山地災害調査と警戒避難基準に関する研究
Version 2007-September/12 temp.
(暫定版:写真が多くやや重いですが、ご容赦ください。)
九州大学森林保全学研究室
久保田・Hasnawir
Bawakaraeng山の大規模崩壊と堆積物(2007. July)
2004年3月に発生したバワカラエン山(Bawakaraeng)カルデラの大規模崩壊に
起因する不安定堆積土砂からのジェネベラン(Jeneberang)川上流の土石流や、
周辺斜面の崩壊、警戒避難基準について現地調査などを行いましたので簡単に報告します。
レンケセ村(Lengkese)の小学校埋没地点(左)、
避難場所などを示したNGOによる自主警戒情報掲示板
◇ ジェネベラン(Jeneberang)川上流:
◆ この大規模崩壊のためレンケセ村(Lengkese)が被災し小学校などが土砂に埋もれ、
約30名が行方不明になりましたが、その地点の渓床勾配は7度〜9度でした。
この勾配では上流からの土石流は停止しないと思われます。
カルデラの大規模崩壊地にはまだ不安定斜面が存在し、今後も数百万m3規模の崩壊発生も
予測されています。
目下、堆積地には住民による植林などが進められていますが、再度土砂流出に襲われる
危険が高い場所なので、地元NGOが製作した警戒避難を促す情報板も設置されています。
その他、レンケセ村内には小規模な崩壊も複数見られました。
◆ 当研究室では、現地スラウェシ森林研究所のご協力により、
この大規模崩壊土塊のほぐれ率等を推定するために崩壊堆積物の土質試験も行っています。
詳細は整理後に公開しますが、
例として、(後述の警戒基準雨量とも関係する)飽和透水係数を示すと、カルデラ直下流における
大規模崩壊堆積物で10-4オーダー、
他の小規模表層崩壊周辺斜面では10-3オーダーとなっています。
◆ 流域中下流は昔の製紙産業の影響で伐採跡地の疎林が目立つ地域で、地元の研究者からは、
この大規模崩壊のみでなく流域全般の森林斜面の管理も検討が必要と言われています。
レンケセ村の様子(森林と棚田の中に集落が散在)
レンケセ村周辺での小規模崩壊
森林のない斜面や伐採跡地の疎林も目立つ周辺の山地
◇ ジェネベラン(Jeneberang)川中流:
大規模崩壊からの土砂流出のため河道の荒廃は著しく既往の砂防堰堤は満砂で埋没に近い状況です。
日本の協力で、新たな砂防施設の設置が進められていますが、
新しい堰堤の袖を越える土石流も発生しています。
土砂流出状況(道路・橋梁も被災している、2007年7月)
中下流にある満砂状態の砂防堰堤(左端の砂防堰堤は2007年2月に土石流が袖を完全に越流し一部被災)
◇ ジェネベラン(Jeneberang)川下流:
下流の州都マッカサル(Makassar;旧名Ujung
Pandang、人口120万人)へ水資源を
供給するビリビリ(Bilibili)ダムに流入する大規模崩壊からの土砂と濁水が、飲料水などの取水に
悪影響を与えており対策が急がれています。
下流ビリビリ(Bilibili)ダムにおける濁水の様子とダム本体の一部(2007年7月)
◇ 警戒避難雨量の研究:
ジェネベラン川上流のマリノにはテレメータもあり、下流のビリビリダム管理事務所で雨量の
データを無線で受信しています。
レンケセ村のカルデラ出口の雨量計はデータロガー収集形式です。レンケセの雨量データは
ハザマ褐サ地事務所のご協力で、テレメータ雨量データは当局のご協力により提供いただき、
土石流など土砂流出発生・非発生の雨量を解析中です。
解析には、平野九州大学工学部名誉教授らの土砂流出強度解析の手法を用いることにしました。
様々な情報と雨量データを提供いただいたハザマ現地事務所の方々に記して感謝いたします。
現地雨量計、テレメータアンテナ、土砂流出強度解析のイメージ図
ビリビリダムから水の供給を受けるマッカサルの海岸夕景、市街の裏通り(どこか日本的)、
ついでにバリ島アグン火山の夕景
◇ 現地セミナー:山地災害に関する現地セミナーが、「ハサヌディン大学(Hasanuddin)
森林科学部」および「国立スラウェシ森林研究所」で開催され、久保田が講演・話題提供
を行いました。
これからもこれらの大学及び機関と九州大学との研究協力が期待されています。
国立スラウェシ森林研究所と
ハサヌディン大学森林科学部および大学本部周辺
国立スラウェシ森林研究所のセミナーと
ハサヌディン大学森林科学部のセミナーの様子
*著作権のある資料を含みますので、印刷して配布をするのはお控えください。
http://ffpsc.agr.kyushu-u.ac.jp/control/