2010年7月14日梅雨災害による九州北部の
土石流、森林斜面崩壊<速報>
Version July29,2010 (2010年8月4日改訂) 九州大学森林保全学研究室
下記2つの災害箇所に関する当研究室の現地調査結果を報告します。
1.佐賀県吉野ヶ里町(よしのがりちょう)(旧東背振村)永山地区
推定発生時刻: 2010年7月14日9時頃。
気象条件、雨量:発生までの総雨量273mm最大時間雨量50mm/hr
(直近の北山と権現山欠測または未公表のため佐賀気象台)、梅雨前線と前線上の低気圧東進。
地形:被災地は小渓流の出口。県道をはさんで上流側に集落があり、被災部での渓床勾配は11度、
流下部では約12度で、破壊された砂防堰堤上流は20度以上。南向き斜面。
地質:花崗岩
植生:スギ・ヒノキ林、下流は竹林も存在
流速:破壊された砂防堰堤(高さ約7〜8m)下流の流下部の湾曲部では、堰上げ高さから計算するナップ式を
使用して、12.4m/s(約45km/hr)と計算された。
規模と特徴:800m程度流下、堆積部は幅最大30m、長さは約23mで堆積勾配は約2度、大礫も多く堆積し、
最大礫径は2m程度。
流木:ほとんどがスギで、胸高直径25cm程度で、長さ22m程度。
被災状況 位置図
被災家屋
被災した林道 破壊された砂防ダム 流下した大礫
2.福岡県桂川町(けいせんまち)瀬戸地区
推定発生時刻: 7月14日8時過ぎ。
気象条件、雨量:発生までの総雨量487mm最大時間雨量57mm/hr(飯塚)、梅雨前線と前線上の低気圧東進。
地形:遷急線の下方で、斜面が左右の谷状の凹部に囲まれて凸状地形を示す箇所で発生。西向き斜面。
周辺竹林斜面勾配40度から35度程度。
植生:竹林(根は盤状で深さは平均0.8m程度)
地質:中生層(三郡変成岩の片岩類)
規模:水平長さ約60m、高さ約40m、最大幅44m、深さ約3m、滑落崖高さ約9m、勾配約33度、
斜面下端から崩土末端までの距離約48m、等価摩擦係数0.364程度。
飽和透水係数:すべり面上方で0.0254cm/s程度
土質定数:サンプルを採取し、一面せん断試験を実施、その後FEM斜面安定解析も行った。
FEM斜面安定解析:今回の大雨では安全率Fsが1.0より小さく崩壊する。それ以前の大雨では崩壊しなかったものの
降雨なしでも元々Fs=1.08程度と安定な斜面とは言えない上、近年の降雨の増加で崩壊か?
位置図 崩壊状況
側方崖 被災家屋 被災したJR九州の福北ゆたか線(後方は被災家屋)
竹林の根系 仮復旧のJR福北ゆたか線(筑豊本線)と被災家屋
(筑豊本線手前山側の道は、江戸と長崎を結んだ旧長崎街道)
http://ffpsc.agr.kyushu-u.ac.jp/control/