宮崎県耳川流域山地渓流荒廃状況調査について
(Ver. 2007/8/17)
発電ダム上流における崩壊と土砂流入状況の例
九州大学大学院 農学研究院 森林保全学研究室
2005年(H17年)の台風14号災害やその後の大雨により生じた宮崎県耳川上流域の山地渓流荒廃状況調査を
九州電力(株)及び西日本技術開発(株)のご協力により行いましたので、簡単に報告します。
(1) 荒廃状況の特徴
耳川上流左支川柳原川にある塚原ダム周辺のような大規模崩壊が見られる。また、流木も多数に及ぶ。
一方、右支川七ツ山川上流の宮の元ダム上流域では、表層崩壊が見られるものの、現地を見る限り荒廃度は
それほど著しくはない。しかし、宮の元ダムでの流出土砂量は、九州電力の浚渫土砂量から見て、2005年台風
14号後に約3万m3も生じている。
塚原ダム周辺の大規模崩壊例と上椎葉ダムの流木流下状況
また、流域全体で地質(四万十層群)が大きく変わるとは考えられないが、細かな地質構造の違いと地形及び
降雨分布の差は支川流域ごとに生じる可能性があるので、九州電力の調査では、流域ごと(発電ダム上流流域)の
崩壊跡地など裸地率は台風14号前後で2倍以上に増加している場所とほとんど変化のない流域に2分化される。
宮の元ダム上流では裸地率は2倍以上に増加している。
宮の元ダム上流における表層崩壊の例
宮の元ダム上流における砂防堰堤への土砂流出と渓床不安定土砂の例
宮の元ダム上流山地と支川渓流の様子、それほど荒廃していない。
(2) 荒廃対策の可能性
しかしながら、宮の元ダム上流域の山地・渓流の荒廃は甚大とは思えない状況である。それにもかかわらず、
3万m3も土砂流出があることは、渓岸の侵食土砂と渓流河床の不安定土砂が流出していると考えられ、現地材料
(渓流沿いの間伐材や流木防止のため伐採された渓畔の材と転石など)を使用した低堰堤群による経済的かつ環境に
優しい土砂流出・流木対策の可能性が示唆される。
また、表層崩壊が林道の排水などが原因で生じている可能性のある場所も見受けられた。そこで、林齢と崩壊面積の
関係を林道(山岳道路)の崩壊直上部の有無で分類して整理検討した(下図)。すると既往研究(小山 2003など)と同じく、
林道が存在すると林齢が大きくなっても表層崩壊が生じることが分かった。一方、林道のない場合に生じるものは、
林齢の低い場合に集中している。
林齢と崩壊面積と林道の有無
(途中結果;小山2003に加筆)
このことから、急な山地に林道を設置した場合は、下方斜面に崩壊が生じないように排水・盛土管理などを万全にすべきと考える。
今後は、地球温暖化に伴い、雨量の増加が予想されており、この林道管理の問題は現在以上に重要と思われる。
参考文献:
小山 敢(2003):鳥取県で発生したいくつかの表層崩壊に関連する素因調査、鳥取県林業試験場研究報告No.40、p29-34。
以上です。(筆責 久保田)