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研究内容

 古くから人は、生物が作り出す高分子を材料として巧みに利用してきました。代表的な高分子は、地球上で最も多く存在する有機化合物であるセルロース、昆虫や甲殻類の外皮の主成分であるキチンです。このほかにも、さまざまな生物から有用な多糖類が得られます。また、絹などのタンパク質繊維も重要な高分子材料です。
 これらの"資源高分子"は、それぞれ一本の分子からナノサイズの微小繊維や分子集合体を形成し、さらに集まって大きなマイクロサイズでの構造体を形成します。これは階層構造形成と呼ばれ、資源高分子を研究する上で最も大切な概念です。当研究室では、この概念を基本として、「どのようなメカニズムで分子が集合するのか」という基礎研究から、「分子の集合状態を制御した構造体の構築」という発展的研究まで、機能材料の創製を目的とし て研究を行っています。

研究の特徴

 私たちは「レオロジー」という学問を用いて、資源高分子の材料としての可能性を検討しています。レオロジーとは、簡単に言えば「材料がどのように変形・流動」するかに関わる学問です。聞きなれない言葉ですが、レオロジーは私たちの生活に深く関わっています。例えば、食品の喉越しや歯ごたえといったいわゆるテクスチャー、血液の流動・凝固特性を利用した医療、 また土地の液状化現象や地滑りなどにもレオロジーは関係します。私たちが対象とする高分子材料の成型加工には特に欠かせ ない学問です。
 また、このような材料の"物性"は、材料がもつ"構造"と大きくかかわっています。構造を知る手段は色々ありますが、私たちはおもに散乱現象を用いて材料の構造を調べています。

高分子が君たちをよんでいるっ!一緒にやらないか!

具体的な研究内容

多糖類溶液から機能材料の創製

 多糖類を溶解させ、その溶液特性を解析するとともに、溶液から繊維、フィルム、ゲルなどの材料創製を行っています。この際のキーワードの一つはブレンド。単独の多糖類では得られない特性を種々の多糖類のブレンドで導き出そうというアプローチです。また、多糖類の凝集しやすさを利用して、液晶や光学異方性ゲルの創製を行っています。

 溶液を調製する際、あるいはそれから繊維やフィルムを作る際には溶媒が必要となります。これまでに用いられてきたセルロース溶媒の多くは人体に有害なものでしたが、わたしたちは人や環境にやさしい溶媒を用いて材料を創製する研究を行っています。

アオサから調製した自己修復ゲル(左)およびセルロースから調製した光学異方性ゲルの偏光顕微鏡写真(中央、右)

繊維ネットワークの構造とレオロジー特性

 繊維ネットワーク構造を利用する工業製品は、紙、織物、繊維強化プラスチックなどをはじめとしてその種類および用途は多岐にわたります。このような構造体の物性を知ることは、これら製品の実用に際して最も重要です。そこで、繊維ネットワークの構造と粘弾性等の物性の関係を明らかにし、繊維ネットワークのプロセシング改善に寄与する研究を行っています。また、非線形現象を利用して枝分かれやひび割れによるネットワークを構築し、その特性を探っています。

繊維ネットワーク

繊維材料における基礎理論の構築

 自然科学の大部分の学問は、実験と理論の両輪によって発展してきているといえます。しかし、繊維材料に関しては包括的な理論がまだ十分ではありません。そこで、分子オーダーからマクロなオーダーに至るまで、具体的には水素結合⇒高分子鎖のねじれ⇒高分子の絡み合い⇒繊維の絡み合い⇒繊維ネットワーク…といった各階層構造をリンクさせるような基礎理論の構築を目指しています。

 たとえば、高分子鎖のねじれは、分子が凝集する核になることが考えられます。溶液状態では、この凝集は架橋点としてふるまうため、系はゲル状を呈することが予想されます。このように、高分子鎖のねじれのメカニズムを理解することは、材料の創製につながる重要な課題です。