樹木の幹材および根材の形成機構の解明

 樹木の根の形成層活動,木部形成機構および根材の性質については不明な点が多い。本研究では,形成層活動の季節変動、始原細胞から新生木部細胞への伸長成長、ミクロフィブリル傾角について、形成層齢や環境要因との関係を検討している。

スギ黒心材形成に関する研究

 日本の代表的造林樹種であるスギは,心材色の変異が大きく,中でも黒色化した心材(黒心)は,装飾的価値が低いとされ,また生材含水率が高いために乾燥コストや輸送コストがかかり,利用上の問題になっている。本研究では,黒心化が弱アルカリ性下で起こることに着目し,樹幹内のカリウムの移動・蓄積のメカニズムを明らかにすることで,黒心化発現機構の解明を目指している。

早生樹の材質

 高炭素固定能を有する早生樹木の育成と材質の評価による新しい木質資源の創出は,持続可能でかつ環境との相性が良い資源利用が求められる中で極めて重要である。本研究では,成長・樹形ともに良好で,かつ九州に分布域を持つ早生樹種および外来の早生樹種を対象に,木材性質の樹幹内変動を明らかにし,利用可能性を検討するとともに将来の材質育種への可能性を検討している。

木材の流体透過性と木材内への防腐薬剤の定着性

 木材の使用期間を延ばすための保存処理では,薬剤の注入性と固着性の良否が製品の性能を決定づける。これらは木材組織構造と密接に関係することから,木材内の透過経路や固着した薬剤の分布をアーティファクトの影響なく可視化する方法の開発は極めて重要である。本研究では,CLSMとSEM-EDXAの利点に着目し,木材内の流体挙動を正確に捉えることで,浸透性や固着性に関与する木材組織構造因子を解明する。

木材の音弾性効果

 音弾性効果とは,材料が受けた外力により材料内部を伝播する超音波の速度が変化する現象である。この現象を利用することにより木材中の力学的状態を非破壊的に知ることが可能となる。本研究の最終的な目標は木造の構造物の安全性を非破壊的に評価することである。これまでに,木材の音弾性現象の基礎的実験を行い,他材料には見られない木材特有の現象を得てきた。現在は,これらの現象を利用して,木材の応力解析を行っており,音弾性法を非破壊的な手法として木材の応力測定法へ適用することの道が拓けてきている段階である。