ここでは読んだ文献の感想について紹介します。読み違えているところはたくさんあると思いますが、私が文献を読んだ素直な感想です。このページの 一番の目的は、私が読んだ論文を忘れないようにすること。その感想をどこからでも読めることです。

Deguchi et al. (2006) The influence of seasonal changes in canopy structure on interception loss: Application of the revised Gash model. Journal of Hydrology,318,80-102.

愛知県の落葉広葉樹二次林で樹冠構造の変化とTF,SFを計っています.TFの季節による変化は3.8%,一方,SFは季節による差は少なく, わずか0.4%です.(もともと,SFは降水量の6%しかない)という結果になっています.TFのばらつきは降雨強度によることやSFはDBHの関数に なることなども述べられていて,スタンダードなことを地に足つけてしている印象があります.この論文の特徴は,Gashモデルの パラメータがレビューしてあること,さらにIntroductionに樹冠遮断研究がいろいろとレビューしてあることだと思います. これを読んで,Gashモデルについて少し勉強しなければという気にさせられました.(2007年6月21日)

Rodrigo and Avila (2001) Influence of sampling size in the estimation of mean throuhfall in two Mediterranean holm oak forests. Journal of Hydrology, 273, 216-227.

常緑広葉樹のholm oak(トキワガシ)を対象とした研究です.場所はスペインで地中海から25kmの山地で行なわれています. 2サイトぞれぞれ32個のコレクターによってサンプリングされたTFを用いて,必要なサンプリング数を求めています. さらにサンプリングインターバルについても考察されており,サンプリング期間が長くなれば,必要サンプル数が少なくなることも 述べています.(インターバルが長くなると,降水量も多くなるので,TFの空間的ばらつきが小さくなり,必要サンプル数も小さくなります.) なお,あんまり詳しく述べられていませんが,2つのサイトは北斜面に位置していて,傾斜が異なっています(37.5°と20.5°). それでも,必要サンプル数は大きく変わらないというのは,非常に興味深い結果です.(2007年6月21日)

再読しました。必要サンプル数の求め方について少し理解が深まった気がします。必要サンプル数は(モンテカルロという単語はでてきませんが、) モンテカルロとt分布の2つを用いています。モンテカルロは繰り返し(replacement)を許さない方法を用いています。この方法を用いた場合、最終的には CVは0となるので、その0への近づき方によってサンプル数を求めています。これとt分布を用いた方法と比較すると、t分布を用いた方が必要サンプル数は、 若干小さくなります。どの方法を用いるかは目的によると思いますが、非常に難しい問題だと思います。(2007年7月16日)

Kumagai et al. (2005) Effects of tree-to-tree and radial variations on sapflow estimates of transpiration in Japanese cedar. Agricultural and Forest Meteorology, 135, 110-116.

樹液流の深さ方向の空間変動についての論文です.深さ方向の変動を考慮するか,考慮しないかで林分レベルにスケールアップする際に必要な樹液流観測数 が異なることをモンテカルロ法を用いて示しています.樹液流と辺材面積,DBHとの相関関係が見られなかったことから,モンテカルロ法を使っており, 筋道がしっかりしていると思います.また,最後にはこの研究は'elite data set'(人工林で蒸散量が大きく,日変化が少ない時期のデータ)を使ったから, 他の森林ではもっとばらつきが大きくなる可能性があると示しています.'elite data set'というのが面白い表現だと思いました.(2007年7月16日)

蔵冶ら (1997) 風速がスギ,ヒノキ壮齢林の樹幹流下量に及ぼす影響. 日本林学会誌,79, 215-221.

東京大学の千葉演習林で行われた研究です.風速が強いときと弱い時の樹幹流の大きさは,同じ降雨量に対して約2倍もあることを示しており, この差は雨水配分全体にも影響していることを示唆しています.ただし,強風時でも弱風時でもDBHと樹幹流には明確な関係があるという結果でした. 印象としては,森林の基礎的な情報(DBHや樹高)がきちんと記述されており,考察もわかりやすく勉強になりました. 特に,熱帯林の樹幹流が少ない原因の1つとして熱帯は風速が弱いことが関係しているのではないかという考察はなるほどと思いました.(2007年7月16日)

Komatsu et al.(2007) What is the best way to represent surface conductance for a range of vegetated sites? Hydrological Processes, 21, 1142-1147.

植生による蒸散や光合成特性の違いを把握する上で重要なパラメータである表面コンダクタンス(Gs)に関する論文です。 GsをVPDが1.0KPa未満のデータも使って得られたGsmaxは、 (1)測定期間の長さの影響を受けやすい、(2)遮断蒸発の時に得られたデータの可能性がある、(3)VPDの測定誤差の影響を受けやすい、という3つの欠点?があるので、 VPDが1.0KP以上の時に得られたGsmaxであるGs^maxを用いた方が樹高との相関関係が高いことを示しています。 言いかえると、Gs^maxを用いることによって、樹高との関係が導き出せたということです。蒸散に詳しい人に色々教えてもらってやっと理解できました。 小松さんの以前の論文に基づいて書かれているので、その論文も読んでみようと思います。(2007年7月19日)

Yoshifuji et al. (2006) Inter-annual variation in growing season length of a tropical seasonal forest in northern Thailand. Forest Ecology and Managenent, 229, 333-339.

タイの北部で,3年間,ヒートパルスによって観測された樹液流と日射計によって観測されたLAIの結果を示しています. 結論から言うと樹木の生理的特性??(樹液流と落葉・着葉)の年々変動は,土壌水分の影響を強く受けているということが示されています. なぜなら,乾季の途中で大きな降雨イベントのあった年は,着葉や樹液流の開始が,他の年と比較し,大きいためです. その差は40-60日で温帯で観測されている20日程度よりもはるかに大きく,熱帯では特に,土壌水分の影響が大きいのではないかと考察しています. また,樹液流と落葉・着葉には,若干のタイムラグ(落葉する前に,樹液流が小さくなる)があることも示しています. 観測の面で興味深かったのは,林外と林内に日射計を置いておけば,それがLAIの変化の指標になるという点でした. 観測技術のことはまだまだわからないことが多いですが,比較的容易にできそうですし,いつか使ってみたいなと思いました.(2007年8月1日)

Iida et al. (2005) Change of interception process due to the succession from Japanese red pine to evergreen oak. Journal of Hydrology, 315, 154-166.

アカマツから広葉樹林への遷移が雨水配分に及ぼす影響についての論文です.1984-85(遷移前)と2001-02(遷移中)との比較を行っています. それによると,樹冠通過雨に有意な変化は見られなかったものの,樹幹流は有意に増加し,樹冠遮断は有意に減少するという結果が示されています. さらに,樹冠遮断量が減少する原因として,アカマツの樹体(特に幹)への高い水分保持能が非常に高いことあげられています. 樹幹流については,比較的詳しく述べられており,2001-02では,下層木の樹幹流が上層木のアカマツと比較し大きいというのもおもしろい結果だなと思いました. 全体的には,アカマツの衰退はいろいろなところで言われており,その影響を調べた研究として,非常に興味深いなと思いました. また,本質とは関係ないのですが,樹冠通過雨コレクターをちゃんとt分布に基づく検定をかけており,そういう論文がレビューされていたので勉強になりました.(2007年8月1日)

Iida et al. (2006) Change of evapotranspiration components due to the succession from Japanese red pine to evergreen oak. Journal of Hydrology, 326, 166-180.

雨水配分の論文(Iida et al.,2005)を読んだので,ついでに読んでみました.アカマツから広葉樹林への遷移が森林の水循環に及ぼす影響についての論文です. 遷移が進むにつれて,上層木であるアカマツの蒸散量が著しく低下しており,その量は遷移で入ってきた下層木の半分以下という結果が示されています. その原因として(1)下層への純放射量の増加,(2)sap flow areaがアカマツと下層木で変わらない,(3)樹液流速がアカマツ<下層木,という3つをあげています. アカマツの方が下層木と比較し,basal areaでは圧倒的に大きいのに,蒸散量は小さいというのは驚きです.樹木も!?見た目で判断してはいけないということですかね... 成熟林の蒸散量低下については,たくさんレビューがあって勉強になりました.一斉林だと一般的には,だんだん心材が増加し,樹液流速が低下するために,蒸散量は低下し, ユーカリではそれによってLAIが減少するみたいです.こういうのを読むと,樹木の生理的現象はいろいろ結びついていることがわかって,おもしろいなと思います.(2007年8月1日)

Burns et al. (2007) Recent climate trends and implications for water resources in the Catskill Mountain region, New York, USA. Journal of Hydrology, 336, 155-170.

50年に渡る長期的な水文・気象データに基づいて,長期間にわたる水循環の変化を明らかにし,水資源に対する影響を考察している論文です. 場所はアメリカのCatskill Mountainで行われてています.この地域の水資源が大切なのはニューヨークに水を供給しているからだそうです. 日本でいうと,東京に水を供給している利根川上流部みたいなものかなと思いました.標高は1000m足らず,年平均気温は7.4℃,年平均降水量は1151mmです. 気温,降水量ともに上昇していましたが,上昇している時期と低下している時期が繰り返され,全体的にはやや上昇というのが見てとれます. こういう結果を見ていると,解析期間の長さというのは重要だなと感じます.長さの違いによって全く違う結果が生み出される可能性があるからです. また,気温の上昇によって,蒸発散量は上昇するものの降水量増加の方が大きいので,流量自体は増加する傾向が見られました. しかし,高標高地域では気温の上昇幅が大きい観測例も多いので,さらに高標高の地域では減少する可能性もあると述べられています. 私が一番知りたかったのは,融雪がどう変化しているかですが,気温の上昇によって融雪が平均5日早くなり,4月の流量も減少していました.(2007年8月2日)

Horton et al. (2006) Assessment of climate-change impacts on alpine discharge regimes with climate model uncertainty. Hydrological Processes, 20, 2091-2109.

スイスのアルペン地方で行われた温暖化の水循環予測を行った論文です.多くのRCMの計算結果(19種類)を12流域に適用して,その変化を調べています. その結果,予測された流量は用いたRCMによっても,また流域によってもバラバラであることを示しています. ヨーロッパではこの手の研究が比較的多いように感じます. それは,ヨーロッパでは温暖化によって,降水量の減少が予測されているため,水資源への懸念も大きいためであると感じました. さらに,現在では氷河からも水の供給がありますが,この研究では氷河の減少は過大に評価しているということわりはあるものの,ほとんどの流域で氷河が大きく減少し, それに伴って水の供給も減ることが予測されています.また,気温が大幅に上昇するため,蒸発散も60-150mm増加することも計算結果として示しています. つまり,ヨーロッパでは降水量減少,氷河減少,蒸発散量増加で水資源はトリプルパンチをくらうみたいです. ちなみに話は変わりますが,やはりこの地方でも融雪の早期化,ピークの減少が起こるようです.(2007年8月9日)

Granier et al. (1999) A lumped water balance model to evaluate duration and intensity of drought constraints in forest stands. Ecological Modelling, 116, 269-283.

シンプルな水文モデルを用いて、土壌の水分条件が植物の蒸散や成長に与える影響について考察しています。 土壌水分量が蒸散量や樹木の成長も抑制するモデルとなっており,実測値とのバリデーションも行われています。 また、下層植生の影響については比較的詳しく述べられている感じを受けました。 この研究のいいところは非常にシンプルなモデルを用いている点であると思います。 入力に必要な土地データが土壌の条件とLAIのみです。 LAIというのはリモセンなどで広域データが入手可能になりつつあるので,広域展開を考えた場合、こういうLAIベースのモデルは使い勝手がいいのではと思いました。 ちなみに,この研究の行われたフランスでは、夏から秋にかけて土壌水分量が樹木成長の抑制要因になっているようでした。 日本では比較的降水量が多いので、土壌水分によって樹木の成長が抑えられることは少ないのかなと思いますが、どうなのか興味があるところです。(2007年8月10日)

Kume et al. (2007) Impact of soil drought on sap flow and water status of evergreen trees in a tropical monsoon forest in northern Thailand. Forest Ecology and Management, 238, 220-230.

タイ北部のコグマ試験値で行われた研究です。2年間に渡り、大きさの異なる4本の木で樹液流と葉のポテンシャルを測定しています。 測定の行われたのは2002-2003ですが、2002は乾季がそれほど長くなかったものの、2003ではエルニーニョの影響で乾季が非常に長くなっており、 乾季の長さによる樹木の生理的反応の違いを調べています。 その結果、樹液流量は2002では乾季の前半と後半で大きな差はなかったものの、2003では後半に大きく減少しており、さらにその減少は小さい木で顕著であることが示されました。 このことは、比較的大きな木では根を深くはれるため、乾季が長くなっても、樹木の生理的活動に与える影響は小さいものの、 小さい木では、根が浅く乾燥の影響を強く受けることを示唆しています。 そのため、このような地域では、大きな木を伐採してしまうと、小さい木は、日射量やVPDの増加で、今まで以上に乾燥の影響を受けやすくなり、成長できない、 つまりは、一度大きな木を伐採してしまうと、自然には再生不可能なのではないかと考察しています。 根の深さによって乾燥への耐性が異なるというのは、おもしろいと思いました。日本だったらどうなんですかね? 日本は樹木にとってそこまで厳しい環境ではないと思うので、根の深さの違いが樹木の生理的活動に与える影響はそこまで大きくない気はしますが...(2007年8月13日)

Hamlet and Lettenmaier (2007) Effects of 20th century warming and climate variability on flood risk in the western U.S. Water Resources Research, 43, W06427.

気候の変化によって,洪水のリスクはどう変化するのかというのを,アメリカの西海岸で調べた研究です. もっとも大きな変化はDJFの気温が低い地域,つまりは積雪地域は雪の減少により,融雪洪水の危険性が小さくなり,洪水リスクが減少することです. また,DJFの気温が0℃付近の地域は複合的な要因により,リスクが増加する地域もあれば減少する地域もあるというのは面白いなと思います. 日本では,だいたいこの地域に位置するところが多いと思うので,気温の上昇のみですべてを語るのは危険な感じがしました. さらにこの研究では,ENSOとPDO,近年増加した降水量の年変動が洪水リスクに影響を与えているかも調べています. その結果,ENSOとPDOでは,地域によっても影響は異なり,明瞭な変化は見られませんでしたが,降水量の年変動増加は洪水リスクを大きくする方に働くようです. モデルについては詳しくは記述されていなかったものの, 入力データにはグリッドデータを用いており,流域のとり方(大きさ)によってバリデーションの結果が異なることをしっかりと示してあり,好感を持ちました. このようにモデルの合う,合わないをしっかり示してやる方が無理やり合っているように見せるよりよっぽどいいなと思います.(2007年8月15日)

Komatsu et al. (2007) Reduction in soil water availability and tree transpiration in a forest with pedestrian trampling. Agrucultral and Forest Meteorology, in press.

人による踏み固めが樹木の蒸散量に影響を与えているかとうかを土壌の水分状態とからめながら調べた研究です. 福岡演習林のマテバシイ林で行っています.本質とは全く関係なのですが,マテバシイ林では昔から多くの研究をしていたことが書かれており,へーっと思いました.. 人の踏み固めが大きいプロットと小さいプロットで,蒸散量と土壌水分量,マトリックポテンシャルを,雨が少ない期間(秋)について比較しています. その結果,雨が少ない期間では,両方のプロットで土壌水分による蒸散量抑制があるものの,その影響は踏み固めプロットの方が大きいことがわかりました. さらに土壌水分を見てみると,踏み固めの小さいプロットでは弱い雨でも浸透するのに対し,踏み固めの大きいプロットでは,強い雨が降らないと浸透していかない ことがわかりました. このような結果を見ると,本文にも書かれていますが,サイトで観測するということは,ある程度プロットを踏み固めていることになるので,注意しなければならないなと思います. この論文を読んでびっくりしたのは,本文の最後にこの研究の弱い点をしっかりと記述していることです. こうすることによって,読むほうもある程度限定的な結果であることが推測できますし, またこのことは次回同じような研究を行う際の実験デザインを示してくれていることにもなると思うので,いいことだと思います.(2007年8月15日)

Guntner wt al. (2007) A global analysis of temporal and spatial variations in continental water storage. Water Resources Research, 43, W05416

全球レベルのグリッドデータと水文モデルを用いて,グローバルスケールでの水資源量について,どの形でどれくらい蓄えられており,季節変動や経年変動をどれくらいするのかを調べた研究です. 水の蓄えは熱帯,温帯の順に高く,乾燥地域が一番小さくなっています. 一方,どのような形で蓄えられているのかというと,熱帯と温帯は,土壌と地下水が多く,寒帯と極地方は雪が多く,乾燥地域では湖や湿地,川といったところに多く蓄えられています. つまり,温帯や熱帯では現に目に見えている(地表面が水域になっている)水以外も豊富ですが,乾燥地域では目に見えている水以外あんまりないということになると思います. また最後の方に,自己相関の大きさについても議論していますが,雪+地下水+土壌水は自己相関が高く,400-1000kmぐらいで落ち着きます. こういう数字を見ると,スケールが大きいなと思います. この他にもいろいろ書かれており,結果を簡単にまとめるのは,難しいのですが,地図に色をぬって示されているので,全世界的な大まかな傾向がわかると思います. ちなみに途中でスペクトル解析がでてくるのですが,あんまり理解できませんでした.勉強しなければと思い知らされました.(2007年8月15日)

小松ら(2003) 森林群落で計測される乖離率(decoupling factor)の値 水文・水資源学会誌,16,423-438.

Penman-Monteith式における放射項、移流項の割合である乖離率Ωについて、多くの論文をレビューすることで、今まで森林では0.1-0.2をとると言われていたのが、正しいのかどうか調べた論文です。 乖離率Ωについて、自分はあまりなじみがなかったのですが、もしΩが小さければ放射項の割合が小さくなり、放射項のデータは比較的ラフなデータを用いることができるなど、 モデルの簡略化などに役立つと解説してあります。 話は前後しますが、これまでの研究では森林の乖離率Ωが小さいという仮定の元で、パラメータの逆算やモデルの簡略化が行われてきたようです。 しかし、この研究の結果を見ると乖離率Ωは針葉樹では0.2以下がほとんどであるのに対し、広葉樹では0.2以上である計測例が半数をこえていることがわかりました。 このことから、広葉樹においては、放射項の簡略化などには注意が必要であることが示されています。 自分の研究で用いたモデルでもいろいろな仮定を使っているので、気をつけなければならないなと思いました。(2007年8月16日)

Kuraji et al.(2001) Generation of stemflow volume and chemistry in a mature Japanese cypress forest. Hydrological Processes, 15, 1967-1978.

東大の千葉演習林で行われた樹幹流に関する研究です。 樹幹流のサンプリングは通常樹幹下部の一箇所で行われるのに対して、樹幹上部と下部でサンプリングすることで、樹幹流の生成過程について調べています。 その結果、樹幹上部と樹幹下部では樹幹上部の方が樹幹流が圧倒的に多く、その量は樹幹下部一箇所でサンプリングするよりも大きいことがわかりました。 このことから、樹幹流の多くは樹幹の上部で生成されること、さらには樹幹に多くの水を保持することができることの2つについて示唆されています。 また、樹冠遮断量についても、降水量、降水時間、降水回数のどれと相関が高いかを調べており、 降水回数との相関が高いことを示しています。日本の場合、比較的降水回数が多く、樹冠遮断量には熱収支的に処理できる限界があることを考えると、 当然といえば当然な気もしますが、おもしろいなと思いました。(2007年8月17日)

村上・山野井(2003)宝川森林理水試験地における積雪水量の高度分布の長期変化 水文・水資源学会誌,16,131-141.

一般的に積雪水量は標高と共に増加することが知られていますが、その増加割合αが長期的に変化しているかを調べた研究です。 森林総研の宝川試験地で行われています。 1937-1967、1983-1984、1996-2000の3期間についてαを比較した結果、αは以前と比べ増加したことがわかりました。 この試験地では森林施業が行われており、その影響やさらには気温上昇による下流の融雪量増加の影響を調べたが、それほど大きくなさそうなので、 流域上流での降雪量増加が原因ではないかと考察されています。 自分自身は、近年の温暖化によって雪と雨の割合が変わっていれば起こりそうな現象だなと思いましたが、論文では考察されていませんでした。 余談ですが、積雪水量は、積雪深と積雪密度から推定されます。 積雪深は比較的容易に観測できますが、積雪密度は観測が大変なので、どうしてもサンプリング回数が少なくなりがちです。 この研究では、積雪密度の時間的、空間的なばらつきも調べています。 それによると積雪密度の空間的ばらつきは小さいこと、また時間的な変動は長期間にわたって変わらないことが示されています。 このような結果がでているとモデル化や観測をする際に参考になってありがたいなと思います。(2007年8月17日)

飯田ら(2006)山地源流域の落葉広葉樹における樹液流速測定に基づく林分蒸散量の評価 水文・水資源学会誌,19,7-16.

グラニエ法を用いて樹液流計測を行った研究です。直径階別に3本の木(S,M,L)を選び、4-10月にかけての樹液流量の変化を考察しています。 さらには、短期水収支法で求めた蒸散量と比較し、グラニエ法によって求められた蒸散量の妥当性を示しています。 樹液流速はS,M,Lの順で早くなることがわかりました。また、樹液流速の日変化は飽差との相関関係が強く、大気側の要求で蒸散量が変化することがわかりました。 つまりは、土壌の乾燥などの影響をほとんど受けてないのだと思います。(2007年8月24日)

Murakami (2006) A proposal for a new forest canopy interception mechanism: Splash droplet evaporation. Journal of Hydrology, 319, 72-82.

10年生程度の若いヒノキを対象にして、水収支法で樹冠遮断量を観測した結果、熱収支の計算であると説明のつかないほど、樹冠からの蒸発量が多いことがわかりました。 また、降雨強度が強くなる方が、その蒸発速度は大きくなることもわかりました。 そこで、新たな概念であるsplash droplet evaporation(飛沫蒸発)を導入することで、樹冠からの蒸発速度が速いという現象が説明できるのではないかと考察しています。 樹冠から地面に到達するまでにどの程度蒸発するのかシミュレーションを行った結果、半径の大きな雨滴(半径50,100μm)ではほとんど蒸発しないのに対し、 小さな雨滴(半径25μm)では地表面に到達する前にすべてが蒸発してしまうという計算結果が得られました。 このことから、降雨中は通常湿度が95%程度と高いにもかかわらず、splash dropletのような非常に小さな雨滴では、大気中で蒸発が起こることがわかったと述べられています。 個人的には非常に面白いなと思いました。このこのような現象もあるかもしれないなと実際に山に入っていても思います。 この現象で、蒸発速度が大きいことのすべてが説明できるかは、課題かもしれませんね。(2007年8月28日)

D'Odrico et al.(2000) Preferential states of seasonal soil moisture: The impact of climate fluctuations. Water Resources Research, 36, 2209-2219.

統計的に土壌水分量を表現できるモデルを用いて、パラメータの違いによって土壌水分量にどのような変化をもたらすかを検証した論文です。 入力を降水のみにして日単位での計算を行っていますが、入力の降水はランダム発生させて作った擬似降雨を用いています。 はじめに、擬似降雨を作成するのに必要なλ(降水間隔の逆数)とα(一降水あたりの降水量)の自己相関とそれぞれの相互相関を調べてから、 λとαを決定しており、丁寧な印象を受けます。 結果は、さまざまなパラメータを変化させることによって、土壌水分量は大きく変わりましたが、 特に、平均降雨量は変わらなくても、λとαの決め方により、土壌水分量の確率分布は大きく変化することが面白いなと思いました。 さらに、与えるパラメータによって、分布の山が2つになる場合と1つになる場合がありました。 植物の生育というのは極端な条件で規定されることも多いので、このような分布の変化は植物にも大きな影響を及ぼすということがわかります。 このような研究は日本では少ないと思うので、温暖化の影響評価などでやってみたいなと思います。いつか。。。(2007年9月10日)

Tateishi et al. Spatial variations in xylem sap flux density in evergreen oak trees with radial-porous wood: comparisons with anatomical observations. Trees, in press

同じ研究室の立石さんの論文です。アラカシを用いて樹液流の方位方向、深さ方向の変動、さらにはそれを生み出す要因について染色実験を用いて考察しています。 まずグラニエ法を用いた樹液流計測を行った結果、方位方向で約65%、深さ方向で約60%の違いが見られました。 また、方位方向でも深さ方向でも、それぞれの方向で(例えば、北と南や、深さ0-20と20-40cm)、ほぼ線形関係を示すことがわかりました。 次に染色実験によって、導管の直径と密度を調べた結果、直径は髄の方向に向かって減少傾向が、密度は増加傾向が見られました。 さらにはこの結果を用いて、深さ別、方位別の水分通動を調べています。 ちょっと解剖学的なところは難しくてわかりませんでしたが、導管の直径と密度の分布が樹液流の空間変動を規定しているというあたりが結論でしょうか。 また、最後にはアラカシは全体的に水を通しているので少ないセンサー数でもそこまで誤差が大きくならないことも書いてあります。 なんとなくはわかるのですが、全部理解するためには、もうちょっと予備知識が必要な気がします。今度、本人にでも聞いてみます。(2007年9月11日)

本人に聞きました.樹液流が,髄方向に向かって減少するのは,導管の密度は髄方向に向かって増加するものの,導管径の方が密度と比較し,4乗だけ流速に利いてくるためだそうです. 導管の直径は内側にいくにしたがって,減少するので,それが密度の増加を打ち消して,さらに流速も減少させています. なるほど!って感じですっきりしました.(2007年11月2日)

Aboal et al.(1999) Rainfall interception in laurel forest in the Canary Islands. Agricultral and Forest Meteorology, 97, 73-86.

樹冠遮断量の観測結果をRutterとGashの2つのモデルのあてはめて推定精度を比較した研究です。 場所はテネリファ?というところみたいです。有名なのでしょうか??森林自体は常緑広葉樹、比較的密な森林です。 比較の結果、Rutterモデルでは10%程度過小評価するのに対しGashモデルはたった2%の過大評価でした。 特に新奇的なことはないと思いますが、モデルのパラメータ算出方法を丁寧に記述している印象があります。 また、さまざまな地域でRutterモデルとGashモデルを適用した例がレビューされているので、モデルを使う際は役にたつかもしれません。 (ただし、パラメータの値はありませんが。。。) AGFOMETの遮断の論文はめずらしいですね。(2007年9月14日)

Huber and Iroume (2001)Variability of annual rainfall partitioning for different sitea and forest covers in Chile. Journal of Hydrology, 248, 78-92.

チリで行われた遮断研究をレビューした論文です。29プロットのデータを用いて広葉樹と針葉樹で樹冠遮断量や、樹冠通過雨量、樹幹流量が異なるかどうか調べています。 その背景には、チリでは近年、大規模な造林が行われているということがあるようです。 降水量とそれぞれの量を回帰した結果、樹冠通過雨量は針葉樹と広葉樹で大きな差はありませんでしたが、樹幹流と樹冠遮断量は有意な差が見られました。(樹幹流:針>広、樹冠遮断:針<広) このことから、樹冠遮断量のみで水資源問題を考えると、近年大規模に造林されている針葉樹の方が広葉樹よりもよいことになります。 また、樹木の生長に伴って樹冠遮断量がどのように変わるのかも調べており、針葉樹(20年生)は、成長と共に遮断量が増加するのに対し、 広葉樹(ほぼ極相)は、成長と共に減少していました。この広葉樹の遮断量減少は下層の竹の影響(20-25年ごとに一斉開花が起こって枯死する)ではないかと考察しています。 シンプルですが面白い研究だなと思いました。(2007年9月14日)

Kim et al.(2006) Large increase in heavy rainfall associated with tropocal cyclone landfalls in Korea after the late 1970s. Geophsical Research Letters, 33, LI8706.

韓国の台風シーズンの降水量が多くなってはいないのだけれども,台風由来の降水量が多くなっているのを考察した論文です. その境目が1970年代後半になっています. その原因として,台風の勢力増大や上陸回数増加などが考えられるのですが,それはあんまりないみたいで,台風と気圧の谷(前線??)の相互作用が強まったためではないかと考察しています. 本当は,大気の風の流れなどと結びつけての考察もあるようなのですが,ちょっと勉強不足でわかりませんでした. 日本でもこのような現象はあるのか,興味があるところです.(2007年10月25日)

Shen et al.(2006) A Pacific Decadal Oscillation record since 1470 AD reconstructed from proxy data of summer rainfall over eastern China. Geophsical Research Letters, 33, LI03702.

北太平洋数十年変動(PDO)に関する論文です. これまでの研究では,主に北アメリカを中心として,樹木の年輪やサンゴを使って,変動を再現してきたのですが, この研究では,中国の歴史的書物などから決められた洪水と渇水の指標を用いて,PDOを再現することに成功した論文です. 1470年からなので,530年に渡って再現しています.このように過去の何かから予測するのは,面白いなと思います. 年輪などもいつか使ってみたいなと思いますが,この研究は歴史的書物を用いてるのは,面白い発想だなと思います. 日本の歴史の書物とかでもできそうですね.(2007年10月25日)

Rebetez and Dobbertin (2004) Climate change may already threaten Scots pine stands in the Swiss Alps. Theoretical and Applied Climatelogy, 79, 1-9.

松枯れと気候変動を結びつけた論文です. ヨーロッパのアルペン地方では,松枯れが起こっており,その原因として,気候変動による気温の上昇や降水量の減少があるのではないかということを考察しています. どうやら,気温の上昇や降水量の減少で,乾燥に対するリスクが高まっており,乾燥で弱ったところに,松食い虫が入って松が枯れるという現象が起こるのではないかと推察しています. でも,松枯れというのは複合的な要因で進むものだから,乾燥が着火材のような役目だけど,それだけが原因ではないだろうと書いています. 日本の松枯れも複合的な要因がありそうですが,なんかこれだ!と一つに絞りたがっているような感じがします. 自分が勉強不足なだけだとは思いますが... こういう研究は,非常に興味があるのでやってみたいなと思います.何年後かな...(2007年10月25日)

Kuraji et al.(2001) Altitudinal increase in rainfall in the Mae Chaem watershed, Thailand. Journal of Meteorological Society of Japan, 79, 353-363.

タイで降水量のばらつきを調べた研究です。 3853km2の流域に13個の雨量計をおいて、降水量の標高依存性、またその標高依存性は、何によってもたらされるのか、を調べています。 2つの雨季と1つの乾季で調べているですが、すべての季節で標高と共に降水量の増加が見られました。 (だいたいの地域で普通に見られると思っていましたが、熱帯では標高があがるにつれて降水量が減る地域(赤道付近)や変わらない地域もあると書いてありました。) その増加の原因は雨季と乾季で異なり、雨季は、標高が増加するにしたがって、降水時間が長くなることによってで、 逆に乾季は、標高が増加するにしたがって、降水強度が増加するためであることがわかりました。 このように季節で標高依存の原因が異なるのはおもしろいなと思います。(2007年10月31日)

Dery et al.(2005) Connectivity between Eurasian cover extent and Canadian snow water equivalent and river discharge. Journal of Geophysical Research, 110, D23106

ヨーロッパの積雪と次の年のカナダの流域の積雪水量,流量に非常に高い相関があることを調べた研究です. これを用いれば,前年のヨーロッパの積雪衛星データより,大まかな流量が予測でき,水利用などに利用できるとあります. ちょっと難しかったので,すべてが理解できたわけではないのですが,このように他の地域の現象と地域的な水循環が結びついているのは, 非常に面白いなと思いました. しかも,調べた流域のみ非常に高い相関関係にあるようでした.不思議です. ぜひ,いつか再読したいなと思います.(2007年11月2日)

Oki and Kanae (2006) Global hydrological cycles and water resources. Science, 313, 1068-1072.

全球レベルでの水循環をレビューした論文です。 世界中で利用可能な水の量はどれくらいか、なぜその量なのか、さらには気候変動によってどのように変化するのか、 ということを丁寧に説明しています。特に、Vertial waterについて詳しく説明しています。 Fig.1を見ると世界的な水の流れが視覚的によくわかります。 森林に関する記述では、二酸化炭素濃度が増加すると、気孔が閉鎖される時間が増えるので結果的には蒸散量は増えないと ありました。元の論文も読んでみたいなと思いました。(2007年11月9日)

Koster et al.(2004) Regions of strong coupling between soil moisture and precipitation. Science, 305, 1138-1140.

土壌水分量が降水量に与える影響を調べた研究です。 世界のどの地域では、土壌水分が降水量に影響を与えているのかを12個の全球モデルを比較することで示しています。 結果は、北アメリカやインド、中央アフリカ、サヘルといった湿潤地帯と乾燥地帯の境界面が最も影響を受けやすいというものでした。 理由として、湿潤地帯では蒸発散量を制限しているのはエネルギーの方であり、 乾燥地帯では、そもそも土壌水分量が蒸発散に与える影響が小さいためであるとしています。 このようにグローバルスケールで見られたことを、もう少し小さいスケールの研究で明らかにしていけば、 おもしろいように思います。 ただ、日本がその対象地域となっていることはほとんどない気がしますが。。。(2007年11月10日)

Kume et al.(2006) Estimation of canopy drying time after rainfall using sap flow measurements in an emergent tree in lowland mixed-dipterocarp forest in Sarawak, Malaysia. Hydrological Processes, 20, 565-578.

マレーシアのサラワクで行われた研究です。 ヒートパルスを用いて葉っぱのぬれ時間を推定した研究です。 これによると、この方法を用いればある程度ぬれ時間を推定することが可能ではあるけども、夜間は使えないなどの制限があり、 用いる地域によっては対象にできる雨が極めて限定されてしまうということでした。 このように樹液流計測を用いて間接的にいろいろなことがわかるのはおもしろいなと思います。 全体的な印象では、降水量の時間分布などが詳しく書かれていたのが印象的でした。 このような蒸発散の研究ではやはり、降水量をきちんと記述してやることが重要だなと思います。(2007年11月10日)

Porporato et al.(2002) Ecohydrology of water-controlled ecosystems. Advances in Water Resources, 25, 1355-1348.

このグループで行われた一連の研究をレビューした論文です. 雨の降り方や土壌の違いが土壌水分に与える影響を調べるために様々な条件でシミュレーションにしています. それによって,植物の最適な環境はどのような環境かといったことも考察しています. これを見ると,同じ雨量でもその降り方によっても大きくことなることや,同じ雨の降り方でも土質によっては,逆の傾向が見られたりと, 非常に面白い結果の連続でした. こういうのを読むと雨の降り方というのは水循環や生態系全体に大きな影響を与えていることがわかります. ただし,このような現象が主に起こるのは半乾燥地域であるとあります. 私自身は,日本のような湿潤な場所でもある程度雨の降り方がこのような循環に影響を与えていると思っているので, 日本でもこのような一連の研究ができたらなと考えています.(2007年11月13日)

Brown et al.(2005) A review of paired catchment studies for determining change in water yield resulting from alterations in vegetation. Journal of Hydrology, 310, 28-61.

対照流域法をレビューした論文です. これまでのレビュー論文と新たに追加された論文を用いて,植生の変化が流量に与える影響を調べています. 年単位,季節単位,また流況曲線を用いて日単位でそれぞれ調べています. 大きな結論から言うと,おそらく気象条件の違いなどによって,それぞれ結果は異なってくるようですが, 皆伐すると,流量は一定期間(10年ほど)増加する,また森林の有無によって夏の渇水流量が大きくことなるといったことは,ある程度共通でいえることのようです. このように流出量を変える原因としては,蒸発散量の変化があげられています. 個人的に面白いなと思ったのは,雨が降った後のピーク流量が,小さな降雨イベントでは森林の有無によって多きく異なるが, 大きな降雨イベントでは森林の有無ではあまり変わらないという結果です. 大きな雨では遮断の割合が小さくなるので,あたりまえといえばあたりまえな気はしますが, 日本の緑のダム問題では,森林は洪水の時の流量を減少させるみたいなことも聞いたことがある気がします. 日本の場合はしとしと長時間降る雨で洪水が起こるとするなら,そうなのかもしれませんが,よくわかりません.(2007年11月13日)

Vertessy et al.(2001) Factors determining relations between stand age and catchment water balance in mountain ash forests. Forest Ecology and Management, 143, 13-26.

樹木の成長が森林の水循環にどのような影響を与えていくのかといったことをフィールドデータから構築された簡単なモデルを用いてシミュレーションしている論文です. オーストラリアで行われています.樹木はアッシュという樹です. その結果,森林の成長にしたがって,上層木の蒸散は減少するものの,下層木の蒸散量は増加することがわかりました. さらに,遮断量も減少し,総合すると,森林が成長するに伴って流出量は増加していくという結果が見られました. これまでの研究と比較して特徴的なのは,下層木の蒸散まできちんと議論している点のようです. 下層木の蒸散増加よりも上層木の蒸散減少の方が顕著に見られ,最終的には下層木の蒸散量の方が多くなるのは, Iida et al. (2006) の結果と似ていると思います.ただし,Iida et al. (2006) では,樹液流速が上層木<下層木によってこの違いが生み出されるとしているのに対し, この研究では辺材面積が変化していくことによりこの違いが見られているという点では異なっています. 実際のフィールドデータで確認が行われているので説得力もあるし,面白い研究だなと思います.(2007年11月13日)

小松ら(2007)流域水収支データの現代的意義−森林蒸発散を考えるために−. 日本森林学会誌,89,346-359.

主に流域水収支法を用いた森林の蒸発散研究をレビューした論文です. これまでどのような研究が行われてきたのか,また今後どのような研究を行っていけばいいのかといったことが丁寧に解説してあります. また一部の研究については,その一連の研究の流れが説明されています. その研究の中にはVertessy et al.(2001) も含まれており,このような流れがあったのかとわかって面白かったです. このように最終的な目標に向かって一連の研究で積み上げていくことは個人的には好きです. 私自身もそのようなスタイルで研究したいなと考えています.(2007年11月14日)

Matsumoto et al.(2003) Climate change and extension of the Ginkgo biloba L. growing season in Japan. Global Change Biology, 9, 1634-1642.

日本全国において,イチョウのフェノロジーと気温との関係を調べ, 近年の気温上昇と,イチョウの着葉期の長期化には相関関係があることを示しています. また,着葉と落葉に分けてみると,着葉が4日,落葉が8日それぞれ変化しているそうです. このように気候変動によって気温が上昇しているだけでなく,植物に変化をもたらしているのを広域的に調べているのは非常に面白いなと思います. データがそろっている日本だからこそできる研究なのではないかなと思います.(2007年11月14日)

Yue et al.(2002) Power of the Mann-Kendall and Spearman's rho tests for detecting monotonic trends in hydrological series. Journal of Hydrology, 259, 254-271.

時系列解析の時に用いるMann-KendallとSpearmanの2つの方法について,モンテカルロシミュレーションを用いて比較を行っている論文です. 最後には,実測データにあてはめることで,適用性についても検討しています. Mann-KendallとSpearmanを比較した結果,両者に大きな違いはありませんでした. また,元になるデータの分布やデータ数によって検出力が異なることなども調べています. つまりは,どういう検定方法を用いるかというよりもデータの分布がどんな形で,またデータ数がどれくらいかというのが,重要になってくるということでしょうか... Appendixにはそれぞれの算出の仕方が載っています. Spearmanはよくわかりませんが,Mann-Kendallは論文によって若干式が違ってたりするので注意が必要かもしれません.(2007年12月4日)

Yue and Hashino (2005) Statistical interpretation of the impact of forest growth on streamflow of the Sameura basin, Japan. Environmental Monitoring and Assessment, 104, 369-384.

四国の早明浦ダムの流出量の変動を調べた論文です. 長期データを用いて,降水量,気温が変化していないにも関わらず,年流量,渇水流量,洪水流量共に減少しており, それは森林による蒸発散の増加が原因ではないかと考察しています. 降水量と流量を結びつける際にあらかじめ相互相関を行って相関が強くなる期間を調べており, このように手順を踏むのはいいことだなと思います. この論文では降水量と流量,気温でトレンドを調べていますが,森林の状態や流出などをある程度モデル化して解析したら, 面白そうな結果が出そうだなと思いました.(2007年12月4日)

Iwashima and Yamamoto (1993) A statistical analysis of the extrene events: long-term trend of heavy daily precipitation. Journal of the Meteorological Society of Japan, 71, 637-640.

日本各地の降水量のデータを用いて,日降水量の極値がどのような年変動をしているかを調べた研究です. 少し,変わった方法をとっており,1890〜1980年代までの日降水量の極値がでたステーションの数を比較しています. その結果,極値がでたステーション数は,年を追うごとに増加傾向が見られました. このことから,日本における日降水量の極値は増加傾向にあるのではないかと考察しています. アメリカでもステーションの数は少ないものの同じことを行っており,同様の傾向が見られたようです. 解析の方法はもう少し工夫できるような気はしますが,降水量の変化を調べた基礎的な研究として価値があるものではないかと思います.(2007年12月4日)

葛葉ら(2001)降水量データの代表性. 水文・水資源学会誌,14,461-471.

日本全域の平均降水量を求める際に,アメダスデータを用いる場合と気象官署のデータを比較している研究です. 気象官署のデータは低標高地域が多いため,計算に用いると過小評価している可能性があるが, アメダスデータの場合は,観測地点数が年によって変化していくので,用いるには注意が必要であるということでした. 予備解析みたいな形で,アメダスのデータを用いて年降水量の地域代表性がどれくらいかを調べており,100km以内だと概ね相関が高いことが示されています. このような解析を繰り返せば,どの時間スケールあるいは精度で降水量を知りたいときは,どれくらいの間隔で置くべきだというのがわかって研究を行う上で, やりやすくなるのではないかと思います.(2007年12月5日)

Yoo (2006) Long term analysis of wet and dry years in Seoul, Korea. Journal of Hydrology, 318, 24-36.

韓国のソウルで観測された1776年から200年程度の年降水量を用いて,その周期性や乾燥年と湿潤年の発生頻度などを調べています. 特に際立った現象(増加傾向や減少傾向,周期性)が見られるわけではありませんが, 乾燥年と湿潤年の継続具合などその特徴を長期データを用いて調べています. ソウルでは1980年から1910年付近に乾燥期間が非常に長く続いた時期があったため,その前後での違いなども調べていますが, そこまで明瞭な傾向は無いようです. 多少観測方法に誤差があっても,このように古い気象データが残っているのはすごいなと思います. もしこのようなデータがどこかにあるのであれば,このように論文として出していくだけでもものすごい価値のあることだと思います.(2007年12月6日)

Brunetti et al.(2004) Temperature, precipitation and extreme events during the last century in Italy. Global and Planetary Change, 40, 141-149.

イタリアの54ステーションのデータを用いて,気温や降水量の長期的な変動を調べた研究です. イタリアでは気温は上昇,降水量は減少という傾向が全体的に明瞭に見えます. また,気温の日較差も増加する傾向にあるようです.(日本では減少していると言われているのに少し意外です.) また,降水量は特に冬季に減少しており,その原因は降水間隔の増加であるとしています. このような傾向が多くのステーションではっきりと見えるのは面白いなと思います. やはり,ヨーロッパの南部は温暖化の影響が深刻になってきそうな気がします. 関連する論文もたくさんあるようなので読んでみたいなと思います.(2007年12月6日)

Brunetti et al.(2002) Droughts and extreme events in regional daily Italian precipitation series. International Journal of Climatology, 22, 543-558.

イタリアの75ステーションのデータを用いて,長期的解析に用いるデータ補完の方法を検討している論文だと思います. 不完全なデータから長期的なトレンドを検出することができるのかを検討しているようです. 抽象的な表現になってしまうのは,結構一生懸命読んだつもりですが,あまり内容が理解できませんでした. この人の2001年の論文が基礎となっているようなので,それを読んでから再読したいと思います.(2007年12月10日)

Maugeri et al.(2001) Trends in Italian total cloud amount, 1951-1996. Geophysical Research Letters, 28, 4551-4554.

上の2つの論文と同じグループが行った研究です. イタリアの38ステーションの雲量(一日8回計測)のデータを用いてイタリアの雲量の50年間の長期的変動を調べています. その結果,南部北部共にすべての季節で有意に減少するという結果になりました. また,その減少割合は特に冬季に強いことがわかりました. 日本も雲量のデータは公開されていた気がするので,できそうですね.誰かやらないかなぁ... このグループの研究では解析の前に欠測値の補完をしていたり,平均を取る前に主成分分析(PCA)をしていたり, 予備的な解析を丁寧にやっている印象を受けます. このような予備的解析もオリジナリティーの一つなのかなと思います.(2007年12月11日)

Kanae et al.(2004) Changes in hourly heavy precipitation at Tokyo from 1890 to1999. Journal of the Meteorological Society of Japan, 82, 241-247.

東京において,長期間の時間データを使って時間あたりの降水強度(mm/hour)の経年変化を調べた論文です. 1970年以降のデータのみみると降水強度は増加しているように見えますが(降水強度が強い雨が増加しているように見えますが), 1890年代からのデータを加えて100年以上の変動を見ると,そのような傾向は見られないことが示されています. また,このような雨が起こる原因を調べたところ,近年は梅雨由来の雨は増加していないものの,台風由来の雨が増加していることがわかりました. 1990年代と同じように降水強度が強い雨が多かった時期に1940年代がありますが,その時は梅雨由来による雨が増加したことが原因だったためのようです. このことから,一概に降水強度が強い雨が増加したといっても,様々な要因が考えられます. なお,太陽の黒点との関係も考察しているのですが,因果関係等はわからないものの,グラフだけ見れば(実際は自己相関もしています), きれいに同じような動きをしてるようにも見えます.不思議ですね...(2007年12月11日)

Fujibe et al.(2005) Long-term trends in the diurnal cycles of precipitation frequency in Japan. Papers in Meteorology and Geophysics(気象研究所研究報告), 55, 13-19.

天気概況のデータから降水の日変化の長期的変動を調べている研究です。 3時の降水はすべての季節で、長期的には上昇傾向にあり、その他の時間(9時、15時、21時)は長期的な傾向は見られませんでした。 また、地域的な差や都市の大きさによる差は見られませんでした。 一方、降水量のデータを用いて同じような解析を行った場合は、天気概況を用いた場合とは違うような傾向を示し、 地域差などが検出されました。 このことは、アメダスの雨量計は、小さい雨は検出できないことによるもののようです。(2007年12月11日)

Brunetti et al.(2004) Changes in daily precipitation frequency and distribution in Italy over the last 120 years. Journal of Geophysical Research, 109, D05102

イタリアで観測された長期間(100年程度)の日降水量のデータを用いて,降水と降水特性の変動を調べた研究です. 地域差や季節差はあるものの,イタリアでは降水日が減少し,降水強度が増加するというような傾向が見られました. トレンドの検出は,スタートする期間によってできるかできないのか異なることも多いので,そのことも丁寧に検討しています. この論文で一番助かったのは,Introで過去の研究をかなり丁寧にレビューしていることです. 世界中のだいたいの傾向がわかるようになっています. Brunettiさんの論文は英語が読みにくいものが多かった気がしますが,この論文は比較的読みやすかったです.(2007年12月24日)

Fujibe et al.(2005) The increasing trend of intense precipitation in Japan based on four-houly data for a hundred years. SOLA, 1, 41-44.

日本での長期間の降水量データを用いてその長期的変動を調べた研究です. 降水をその強さごとに10のカテゴリーに分け,そのカテゴリーの雨の長期的な変動を調べています. その結果,小さい降水が減少し,大きい降水(降水強度が強い降水)が増加する傾向に見られました. この傾向は,期間の前半後半,季節,地域,人口に関係なく見られました. このことから,これらの現象というのは日本全域レベルで確認される現象であることを示唆しています.(2007年12月24日)

Fujibe et al.(2006) Long-term change of heavy precipitation and dry weather in Japan(1901-2004). Journal of Meteorological Society of Japan, 84, 1033-1046.

上に書いた論文の続きの論文です. この論文では,解析をさらに細かくし,月ごとやサイトごとに結果を比較しています. その結果,降水強度の増加が一番強く見られたのは,西日本の秋で,その他の地域,その他の季節は比較的弱いことがわかりました. 一方,降水日の減少は,降水強度の増加よりも明確にすべての地域で,すべての季節でみられました. また,この論文では,日単位と5日単位など様々な単位での結果の違いについても丁寧に考察しています. なお,データの予備的解析のあたりで日本の降水データの測られ方についてもかなり丁寧に記してあります.こういうのがあると助かります.(2007年12月24日)

Fujibe et al.(2006) Long-term changes in the diurnal precipitation cycles in Japan for 106 years (1898-2003). Journal of Meteorological Society of Japan, 84, 311-317.

4時間単位の降水量のデータを使って,降水の日サイクルがどのように変化してきたのかを日本中のデータを用いて調べた研究です. 一番明確に見られた結果は,朝方の降雨は増加傾向にあり夕方の降雨は減少傾向にあるということです.この傾向は主に降雨強度が大きい雨によって,もたらされたものです. 夕方の雨は夕立によって起こることが多いですが,雷も近年減少傾向にありこの傾向は,この雨の傾向と一致するものです. 一方,降雨強度が弱い雨では,大きな時間変化は見られませんでした. しかし,雨の日サイクルの変化の研究はまだまだ少ないようです. このような雨の日サイクルの変化は森林蒸発散とかにも影響しているのでしょうか?(2007年12月24日)

山本・池田(2005)水土保全機能強化総合モデル事業地における森林の変遷と流出特性−水源涵養機能を向上させる森林整備の方向性−. 広島県林業試験場報告,37,15-33.

広島県の大田川上流部で,4つの流域(単木択伐区,帯状択伐区,モザイク状択伐区,未施業区)を使って,森林施業が流出に及ぼす影響を調べた研究です. ちょっと解釈に難しいデータですが,森林施業によって,単木区の年流出量は増加し,モザイク状択伐区はあまり変化がありませんでした. 単木区は主に針葉樹,モザイク状択伐区は広葉樹なのですが,このことから,森林施業による流出量の増加は針葉樹の方が大きいことが示唆されたようです. 他にもいろいろなことを調べていますが,おもしろいなと思ったのは,未施業区と施業区で土壌の孔隙率が異なるという結果です. 未施業区では,A層は長期的に見ても大きな変化はみられませんが,単木区では,間伐後の方が間伐前よりも上昇していました. これは,間伐によって下層植生が増え,根が増えたためではないかと考察していますが,どうなのでしょうか。(2008年1月22日)

Shibata et al.(2001) Dissolved and particulate carbon dynamics in a cool-temperature forested basin in northern Japan. Hydrological Processes, 15, 1817-1828.

北海道の苫小牧で炭素循環について調べた研究です. 流域でインプットのCとアウトプットのC,またリターや樹冠通過雨,地下水などの挙動を調べることで,流域内の炭素循環を定量化しています. インプットのCとアウトプットのCでは,アウトプットのCの方が多く,そのほとんどは土壌から供給されているという結果でした. その理由として火山灰質の土壌なので浸透能が非常に大きいためであるとしています. また,日本の他のサイトと比較した結果,この流域の特徴は,無機態が多く有機態が少ないというものでした. これも,他の流域と比較し浸透能が非常に大きいためではないかと考察されています. 物質循環の論文はあまり読んだことがありませんが,結構興味深く読めました.もっと勉強すればもっと面白くなるのかなとも思いますが.(2008年1月29日)

Shibata et al.(2005) Carbon cycling and budget in a forested basion of southwestern Hokkaido, northern Japan. Ecological Research, 20, 325-331.

上の論文の続きです.フラックス計測を新たはじめたことで,森林生態系全体の炭素循環が把握できるようになっています. これを見ると,河川に流出する量より1オーダーくらい大きい量が内部循環していることになります. このような内部循環は,成熟林よりもこのサイトのような二次林で大きいみたいです. 特にこのサイトの特徴は,土壌への炭素配分が多いことのようです. このような結果を見ると,炭素循環を考える上で,土壌の重要性がよくわかります.(2008年1月29日)

Huntington (2006) Evidence for intensification of global water cycle: Review and synthesis. Journal of Hydrology, 319, 83-95.

主に地域スケールでの,温暖化に伴う水循環の変化をレビュした論文です. 非常に内容が濃くて勉強になります. 結論としては観測データの制限や地域差の問題などで,一概にはどうだとはいえないけれども,傾向自体は結構わかってきているものもある という感じでしょうか. そのため,GCMなどとは異なる現象が見える地域もあるようです.(熱帯の嵐と洪水は,GCMでは増加が予測されているのですが,実際のデータでは変わっていないようです.) 印象としては蒸発散の変化について比較的詳しく書いてあるなと思いました. 蒸発散は増加している地域が多いのですが,パン蒸発量は減少しているといった面白い現象が見られます. 少し残念だったのは,レビューされているのが欧米にかたよっている点です. まぁ,日本などではこういう研究は少ないので仕方が無い気もしますが...(2008年1月29日)

Zveryaev (2004) Seasonaloty in precipitation variability over Europe. Journal of Geophysical Research, 109, D05103.

ヨーロッパのグリッドデータと雨量計ベースの2つのデータセットを用いて,夏季と冬季の時空間的変動を解析した論文です. 解析には,経験的直行関数(EOF)を使っています.EOFはたぶん,PCA(主成分分析)と同じだと思います. その結果,2つのデータセットの結果はほぼ一致し,同様な時空間的傾向が見られました. この傾向を生み出している要因も調べた結果,北大西洋振動(NAO)などと結びついていることがわかりました. グリッドデータの年数は短いのですが,雨量計ベースの長期データと合わせて用いることで解析の幅を広げていると思いました. 主成分分析はヨーロッパの気象系の論文でよく見かけるのですが,流行なのでしょうか??(2008年1月31日)

玉井ら(2004)林野火災とマツ枯れによる森林の衰退が流出量と流況曲線に及ぼす影響−岡山県竜の口山量水試験地の場合−. 日本林学会誌,86,375-379.

竜の口において,森林の回復が流況曲線にどれくらいの影響を与えるのかということを,森林が一度衰退した南谷と一貫して広葉樹が成長してきた 北谷の2流域の流況曲線の違いを解析することにより,考察しています. その結果,森林衰退に伴う流出量の増加は,特に低流量で大きく,最大1.75倍程度あることが明らかとなりました. 論文自体にはあまり言及されていないように思いますが,特に,300日を越えるあたりから増加割合が特に上昇しているのは,蒸発散の関係かもしれないなと思いました. しかし,この論文で用いた方法では,低流量の精度があまりよくないので,そこまで言い切るのは難しいかもしれません. いずれにしても,いろいろな方法で森林の衰退が水循環に与える影響を評価するのは,面白いなと思います.(2008年2月2日)

伊藤ら(2004)関東・中部地方の森林流域における渓流水中のNO3-濃度の分布. 日本林学会誌,86,275-278.

関東,中部地方の80地域の河川において採水し,NO3-の濃度を調べその分布の特徴を調べています. 既往の研究では,関東地方でNO3-濃度が高い地点が多数観測されていますが, この研究でも中部地方と比較し,関東地方の方が高濃度の流域が多数見受けられました. 特に,関東平野に沿うようにしてその分布が広がっていました. このことは,関東地方はNが都市域から大量に流入するためであるとしています. 地質や植生などの条件と,このようなインプットの違いはどちらの方が大きいのでしょうか.. 調べればわかりそうなので,いつか調べてみようと思います.(2008年2月13日)

Komatsu et al.(2008) A model to estimate annual forest evaporation in Japan form mean annual temperature. Journal of Hydrology, 348, 330-340.

日本における森林の年蒸散量と年平均気温,年降水量との相関を調べた結果,年平均気温と相関があり, そのモデルを用いて生じる蒸発散量の推定誤差は日本各地の降水量の推定誤差よりも小さいことから, 年平均気温から年蒸発散量を調べるモデルは,年蒸発散量推定のために有用であることを示しています. 世界的に見ると,年蒸発散量は年降水量と高い相関にあることが多いのですが, 日本のように降水が多いところでは,降水量の制限がなくなり,気温との相関が出てくるのは,おもしろいなと思います.(2008年2月18日)

Komatsu et al.(2008) The effect of converting a native broad-leaved forest to a coniferous plantation forest on annual water yield: A paired-catchment study in northern Japan. Forest Ecology and Management, 2008, 880-886.

山形県の釜淵流域の対象流域法のデータを用いて、森林の変化が年間の水収支に及ぼす影響について調べています。 片方の流域が広葉樹でもう片方の流域は広葉樹を伐採して針葉樹を植えた流域ですが、 針葉樹を植えた流域の方が伐採直後の年流量は多いものの、成長にしたがって小さくなり、広葉樹流域よりも小さくなることがわかりました。 これは、日本の他の流域の結果と異なっています。 その理由は、この流域には冬季の積雪が多く、積雪がある地域では、広葉樹と針葉樹で蒸発散量が大きくことなるからだとしています。 雪の樹冠遮断には興味があるので、このように雪による樹種ごとの水循環の違いが年間の蒸発散量の違いを生み出しているという結果は非常に魅力的だなと思いました。(2008年2月25日)

Davis et al.(1999) A climatology of snowfall-temperature relationships in Canada. journal of Geophysical Research, 104, 11985-11994.

カナダで月平均気温と積雪水量の関係について調べた研究です。 地球温暖化の研究として気温−様々な気象要素の関係を調べる必要があり、この研究では気温−積雪水量の関係を調べています。 長期データを用いて気温−積雪水量の回帰直線を様々なサイトで調べた結果、大きな空間変動がありました。 正確には4つに分けられましたが、平均気温が高くなると気温の上昇で積雪水量が減る地域と逆に水蒸気量の流れ込みが多くなり、積雪水量が増える地域がありました。 これは、温暖化によって地域によっては逆の現象が起こるということになります。 このように気温の上昇が水循環に与える影響は線形関係ではないというのはしっかり頭に入れとく必要があると思います。(2008年2月25日)

佐藤(2008)生物地球化学モデルの現状と未来−静的モデルから動的モデルへの展開−. 日本生態学会誌,58,11-21.

生物地球化学モデルについて生態学の立場から解説しています。 GCMとの兼ね合いはあまり詳しくは説明していませんが、どのような過程を組み込んでいけばいいのかといったころが詳しく書かれています。 動的モデルとは、気候変動に伴う全球的な植生の変化を調べるモデルであり、植生が変化しない静的モデルとは異なります。 私自身が使うことはないと思いますが、動的モデルなどは、計算量も多く、大変そうですね。(2008年4月14日)

阿部・佐藤(2008)北海道東部における林相,斜面地形,下層植生が森林土壌の浸透能に及ぼす影響. 日本森林学会誌,90,84-90.

北海道東部において広域で浸透能を調べ、それを様々な条件でカテゴリーわけした論文です。 その結果、有意な関係があったのは、林相と斜面地形,下層植生でした。 特に林相に注目すると、天然林の方が人工林などと比較して大きかったことから、 施業などでは注意する必要があると結論付けています。 浸透能を求めるのに使っている指標がわかりにくいので、他の文献と比較するのは難しいと思いますが、 この地域ではそうなのかもしれません。うまいように統計処理しているとも思えないこともないですが。。。(2008年4月20日)

Tremblay et al.(2008) Rainfall peak flow responde to clearcutting 50% of three small watersheds in a boreal forest, Montmorency Forest, Quebec. Journal of Hydrology, 352, 67-76.

カナダの山地小流域で、森林の伐採がピーク流量に与える影響を調べた研究です。 森林の伐採が洪水側にきくという論文を読んだのが初めてなので、ちょっとわからない点もありましたら、 introductionでよくレビューされていたので勉強になります。 私の理解した限りでは、森林の伐採がピーク流量に与える影響はどれくらいか?また、それがどれくらいの期間続くのかといったころが、 メインテーマなのでしょうか。 この研究では、4つの流域で違った方法で50%の皆伐を行って、ピーク流量とbankfull discharge??に与える影響を調べています。 結果は、すべての流域でピーク流量は増えましたが、一番大きく増えたのは一番流域面積が小さな流域でした。 しかし、有意に増えたのは1イベントのみで大きくは増えなかったようです。(2008年4月28日)

横井ら(2008)間伐後3〜5年が経過したヒノキ人工林の下層植生. 岐阜県森林研究所研報, 37.

ヒノキ人工林22林分において、間伐後に下層植生を調べている研究です。 その結果、林分間の差が大きく、カテゴリー分けするのは難しいことがわかりました。 また、この研究では、下層植生が多かったところは、間伐する前もある程度下層植生があって、 それが間伐によって成長したのではないかとも述べられています。 このようにたくさんの林分を調べることによって、これまでいわれていたことがどれくらい当てはまる現象なのかというのが推察できて、いいなと思います。(2008年5月1日)

深田ら(2006)土壌保全からみたヒノキ人工林の下層植生の動態と植生管理の応用. 日本林学会誌,88, 231-239.

ヒノキ人工林において、目標とする下層植生の状態にするためには、ヒノキをどのように管理していけばいいのかを調べた論文です。 ヒノキの収量比数と下層植生の明確な関係があれば、収量比数が下層植生管理の指標になるので、それを目指していたようですが、なかなか難しかったみたいです。 ただ、強度間伐をすれば例外なく下層植生が増えています。しかし、通常の管理の範囲内では明確な関係は見られませんでした。 また、温度域で区別をした解析も行っていますが、落葉樹域では、相対的にいったん失われた植生が回復するのが難しいことを示しています。 このような結果は他の研究結果ともつながるかもしれません。 全体的には、やはり上層木だけで下層植生の状態を決めてしまうのは少し無理があるかなと感じました。(2008年5月1日)

牛山・寶(2003)AMeDASデータによる暖候期降水量と最大1時間・日降水量の関係. 水文・水資源学会誌,16,368-374.

アメダスデータを用いて、春から秋にかけての降水量と1時間、日最大降水量との相関を調べた研究です。 その結果、両者には有意な相関関係が見られました。 比較的入手しやすいデータから求めたいデータを推定することができれば便利ですね。 このように基本的な関係を調べるだけでも、広域での降水特性について理解が進むのではないかと思います。(2008年5月22日)

Cheng et al. (2008) The variation of soil temperature and water content of seasonal frozen soil with different vegetation coverage in the headwater region of the Yellow River, China. Environmental Geology, 54, 1755-1762.

季節凍土が起こる地域を対象として地温と土壌水分を調べた研究です. 植生被覆が違う4つのプロットを対象にして行っているのですが,プロットによって凍土のでき方(凍るタイミング,解けるタイミング) に違いがありました.植生がある方が変化がマイルドだったみたいです. 土壌水分から地温を予測する簡単なモデルも作っています.データが1年しかないので何とも言えませんが, 毎年だいたい地温と土壌水分の関係が同じであるならば,面白いし便利だなと思いました.(2008年7月7日)

Komatsu et al. (2007) Do coniferous forests evaporate more water than broad-leaved forests in Japan? Journal of Hydrology, 226, 361-375.

日本において,広葉樹から針葉樹への転換が水消費を増やしたという話がありますが,簡単なモデルを作成して,その是非について議論した論文です. その結果,若い針葉樹と広葉樹の蒸発散量は同じくらいであり,また,老齢の針葉樹と広葉樹では広葉樹の方が蒸発散量が多くなることがわかりました. この結果は,この問題でよく引用されるSwank and Douglass (1974)の結果とは異なっていました. その原因は雨の降り方にあるのではないかと考察しています. Swank and Douglass (1974)で用いられた試験地のCoweetaは降水の季節変動が小さい(つまり,冬にも雨が降る)のに対し,日本の太平洋側は冬季の雨が少ないです. そのため,Swank and Douglass (1974)で検出された針葉樹と広葉樹の差は冬季の蒸発散量の差によって生み出されたのではないかとしています. 昔も読んだのですが読み返してみたので書いてみました.(2008年8月7日)

Murakami et al. (2000) Variation of evapotranspiration with stand age and climate in a small Japanses forested catchment. Journal of Hydrology, 227, 114-127.

成熟した林と若い林での蒸発散量の違いを観測データとモデルを併用して調べている研究です。 林齢に伴ってLAIが変化し,その変化が蒸発散量にも影響を与えていることを調べています。 森林成長と共に森林の様々なパラメータの変化を文献に基づいて決定しており,今後利用できそうな情報もたくさん含まれています。 タイトルにもありますが,成熟した林と若い林での気候応答の違いも調べています。 その結果,若い林では寒い夏と比較し暑い夏の方に敏感に反応しますが,成熟した林ではその逆で寒い夏のほうが敏感に反応していました. ということは温暖化しても成熟した林では蒸発散量があまり変わらないかもしれないということを研究しても面白いかもしれません。(2008年8月15日)

Doi and Katano (2008) Phenological timing of leaf budburst with climate change in Japan. Agricultral and forest meteorology, 148, 512-516.

気象庁の生物季節観測データを用いて,新潟,金沢,前橋,八丈島の4地点で観測された4樹種の展葉データと月単位の気象要素と結びつけいています。 その結果,展葉日と降水量は有意な関係はなく,気温のみ有意な関係がありました。 特に3月の気温とはほぼすべての地点,樹種で有意な関係がありました。 一方で,展葉日が過去から現在にかけて早くなっている地点もあれば遅くなっている地点もありました。 このことから,展葉日には気温が影響はしているものの,その影響の度合いというのは地点ごとにことなるのではないかということが示唆されています。 著者の方は生態学の方のようですが,統計の使い方などが水文の人と違っていて,勉強になりました。(2008年8月17日)

Doi and Takahashi (2008) Latitudinal patterns in the phenological responses of leaf colouring and leaf fall to climate change in Japan Global Ecology and Biogeography, 17, 556-561.

上に書いた論文と同じく気象庁の生物気象観測データを用いて,イチョウとモミジの落葉について,気象条件との絡みを調べています。 その結果,気温と関係があるのですが,その関係が緯度が低いほうがセンシティブであることがわかりました。 つまり,緯度が低いほうが気温の変化に対してフェノロジーが敏感に反応するという結果です。 素人考えでは,寒い地域の方が温度上昇が大きくて,それにフェノロジーがついてきてないからなような気もしますが, いずれにせよ,気象条件の変化と植物の反応が一定ではないのは面白いと思います。(2008年8月17日)

Suzuki and Ohta (2003) Effect of larch forest density on snow surface energy balance. Journal of Hydrometeorology, 4, 1181-1193.

岩手において,露場と立木密度が異なる2つの森林において,熱収支項目の違いを調べた研究です。 いろいろな熱収支項目が3つのサイトで異なっているのですが,特に,リターなどの影響で,アルベドが大きく違うことがわかりました。 融雪において純放射の占める割合は大きいので,アルベドが高いときは,融雪量推定における立木密度の影響は小さいのですが, アルベドが小さい環境では,立木密度の影響を強く受けることがわかりました。 森林の構造と融雪過程の熱収支を結びつけるのはかなり興味があるので面白かったです。(2008年8月22日)

Suzuki et al. (2008) Snow accumulation on evergreen needle-leaved and deciduous broad-leaved trees. Boreal Enveronment Research, 13, in press.

室内実験で降雪遮断モデルのパラメータを求めた研究です。 常緑針葉樹と落葉広葉樹の2樹種において調べられています。 その結果,Cmax(樹冠の最大冠雪量)などは樹種によらずPAIの関数になることがわかりました。 この室内実験で求めたPAIとパラメータの関係を用いて,屋外で行われたフラックス計測の値と比較した結果,冠雪量を過小評価することがわかりました。 それは,今回求めたのではない過程で求められている可能性があるため,更なる実験が必要のようです。 雪の遮断モデルの研究は多くないと思いますが,この論文では,その他の地域のパラメータとも比較しており, 今後汎用性があるのではないかと思います。(2008年8月22日)

Marty (2008) Regime shift of snow days in Switzerland. Geophysical Research Letters, 35, L12501.

スイスのにおいて、標高・斜面別に積雪日の経年変化を調べた研究です。 それによると、積雪日は、標高、斜面に関わらず、1988年でジャンプしていることがわかりました。 つまり、1988年以前のみの解析と以降のみの解析では、それほど大きなトレンドは検出されないものの、1998年でデータがジャンプしています。 温度上昇による積雪の変化は、特に低標高地で顕著であり、低標高地では、気温と積雪量に高い関係が見られます。 一方で高標高地でも近年、積雪量の低下が見られるということは、積雪量の低下は、都市のヒートアイランドのような局地的な現象からきているのではない可能性が高いと考えられます。 イントロで、観光産業とかにとって積雪日の変化は重要だと書かれていたのが、科学論文では新鮮でした。(2008年9月26日)

Wikson et al.(2001) A comparison of methods for determing forest evaporanspiration and its components: sap-flow, soil water budget, eddy covariance and catchment water balance. Agricultral and Forest Meteorology, 106, 153-168.

蒸発散を算出する4つの方法を比較した論文です.蒸発散を推定する方法は様々でそれぞれで長所,短所があります. この論文では,それらの方法について,年単位や日単位で比較しています. 年蒸発散量が推定できた渦相関法と流域水収支法の差は,10%程度であったことがわかりました. 一方で,蒸散量を推定できる樹液流計測で推定した年蒸散量は,推定された蒸発散量と比較し,かなり小さい値となりました. これは,遮断蒸発や林床面蒸発を考慮しても,小さすぎる値でした.単木からスケールアップする過程や,単木の蒸散量推定など, 樹液流計測からの蒸散量推定は,テクニカリーな問題点があるのではないかと考えらます. 土壌の水収支から蒸発散量を推定する方法では,土壌が乾燥している期間以外であれば,渦相関法と樹液流計測によって求められる 日蒸発散量(蒸散量)とまずまずの相関がありました. これまでの研究では,土壌水分から蒸発散量を推定する方法は誤差が大きいとされていたのですが,その理由として, これまでの研究では根の深さを十分に考慮できていなかった,あるいは,土壌水分の空間的ばらつきが十分に考慮できていなかったなどが考えられます. 様々な方法の問題点や利点がデータに基づいて理解しやすい論文だなと思いました.(2008年10月29日)

加藤ら(2008) 振動ノズル式降雨実験装置を用いた荒廃ヒノキ人工林における浸透能の野外測定. 水文・水資源学会誌, 21, 439-448.

浸透能を計測するための装置について、室内実験でその性能を確かめ、野外実験を行った結果を示した論文です。 室内実験の結果では、この研究で用いた装置から発生した降雨は空間的ばらつきが十分に小さいことを示しています。 また、野外実験の結果では、基盤岩や地域の異なる4サイトで行ったにも関わらず、 リターの量、下層植生の量と浸透能には高い相関関係が見られました。 考察によると、リターの量の方が下層植生の量よりも浸透能とは高い関係があるが、 リターの量を保つために下層植生は重要な役割をしていると書いてあります。 このような、しっかりとした予備実験があると結果はかなり説得力のあるものになるなと思いました。(2008年11月29日)

Miyata et al.(2007) Surface runoff as affected by soil water repellenct in a Japanese crypress forest. Hydrological Processes, 21, 2365-2376.

土壌の撥水性と表面流についてヒノキ林で調べた研究です。 ヒノキ林では室内実験の結果、高い飽和透水係数を示したにも関わらず、多くの(時には降雨強度を超えるような)表面流が発生していました。 土壌の撥水性を調べるCSTテストを室内実験で行った結果、ヒノキ林ではこれまでユーカリやマツ林で見られたのと同じくらいの強い撥水性が見られることがわかりました。 また、現地実験で純水とアルコールを撒いて表面流を観測した結果、純水を撒いた時の方が多くの表面流が発生することがわかりました。 これは、撥水性と表面流に密接な関係があることを示唆する結果であり、この研究のオリジナリティーだと思います。 この研究では、体積含水率とマトリックポテンシャルも一緒に観測しているのですが、表面流が発生する時、その関係にヒステリシスが見られました。 降雨開始直後では、まず体積含水率に変化がないにも関わらず、マトリックポテンシャルが増え、マトリックポテンシャルが0kPa付近になったあと急激に体積含水率が上昇しています。 その原因として、まず、バイパス流が起きるためであるみたいです。土壌はあまり詳しくないので詳しい人に聞いてみようと思います。(2008年12月1日)

Kienzle (2008) A new temperature based method to separate rain and snow. Hydrological Processes, in press.

雨と雪の判別は通常、地上の気温を用いて行われますが、その新しい方法を開発し、既往の方法と比較した研究です。 研究はカナダの15ステーションの結果を用いて行われ、そのステーションが比較的標高が広範囲に渡っているのが特徴です。 新しく開発したモデルで、年積雪水量を予測した結果、既往のモデルと比較し、バイアスが小さく、誤差も小さくなることがわかりました。 しかし、2つのモデルパラメータを現地データで推定しない場合(全地点の平均値を用いる場合)は、多少誤差が大きくなる地点もあるようです。 また、判別温度は月単位でも変化しますが、その月変化はサインカーブで推定しています。これにより、誤差は大きいものの、各月で判別温度を求めることが可能になっています。 日本でも同じような研究はありますが、日本は天気概況を用いて、雨と雪を判別しているのに対し、この研究では、積雪深から積雪水量を推定して、雨と雪の判別を行っています。 このような方法を用いれば、日本でもより多くの地点で判別温度を求めることができるかもしれません。(2008年12月1日)

Rolland (2003) Spatial and seasonal variations of air temperature lapse raites in Alpine regions. Journal of Climate, 16, 1032-1046.

ヨーロッパで気温のデータセットを用いて、温度低減率を算出した研究です。 その結果、年平均では100mにつき、0.54℃から0.58℃となりました。また温度低減率は夏に大きくなり、冬に小さくなる傾向が見られました。 また、温度低減率を求める時の回帰直線の相関は、冬に低くなる傾向がありました。 過去の研究では、1.27℃から+0.28℃までかなりばらつきがありましたが、これは過去に用いたデータセットが不十分であったために生まれたばらつきではないかと考察しています。 この研究では、すべての月の長期間かつ標高のバランスのとれたデータセットを用いているため、その辺りが解消されているのではないかと考察されています。 また、サイトにある地形情報(尾根か谷か)を用いても解析を行っています。 温度低減率から、ある地点の温度を推定した場合、地形情報も入力データとして加えれば、特に、ばらつきが大きくなる冬季では誤差が小さくなることが示されています。 広域展開をする場合、データを推定することは多いと思いますが、このように予め推定誤差がわかっていると助かります。 また、この論文はIntroに山岳地域で気象要素のばらつきが大きいことがしっかりとレビューされており、勉強になりました。(2008年12月4日)

Watanabe and Mizutani (1996) Model study on micrometeorological aspects of rainfall interception over an evergreen broad-leaved forest. Agricultural and Forest Meteorology, 80, 195-214.

マルチレイアーの樹冠遮断モデルを用いて、樹冠遮断が起こっている時間の気候の変化について、調べている論文です。 まず、モデルを小さな木に適用して、モデルの性能評価を行い、森林に適用しています。 2本の小さな木に適用した結果、乾き終わりは誤差が大きくなりましたが、乾き始めの誤差は小さくなりました。 森林で適用した結果でも、渦相関法で求められた顕熱とモデル上の顕熱はよく一致していました。 また、夜に樹冠からの蒸発が起こる場合は、負の顕熱フラックスが観測され、気温の鉛直分布もかなり拡散していました。 これは、夜間は顕熱から熱を得ており、それは鉛直方向に拡散するので、絶え間なく顕熱からの熱の供給が可能になっているようです。 この論文では、渦相関法の問題点についても述べてあります。雨が降っている時は、観測精度に疑問があるようです。 これは、今でもあまり解決されていない問題なのではないでしょうか。(2008年12月12日)

Carlyle-Moses and Price (2007) Modelling canopy interception loss from a Madrean pine-oak stand, Northeastern Mexico. Hydrological Processes, 21, 2572-2580.

メキシコで行われた樹冠遮断のモデル研究です。 GashとLiuの2つのモデルを用いて、観測値と推定値を比較しています。 その結果、パラメータを観測値から求めた場合は、どちらのモデルでも全体的には誤差は小さいですが、パラメータを既往の研究からの近似式などを使った場合は、誤差が大きくなりました。 このことから、このモデルを森林管理に応用するにはもう少し課題があるということを示しています。 その理由の一つとして、疎な森林でのモデルの精度はあまり高くないというのがあるみたいです。このことについては、上の論文(Watanabe and Mizutani, 1996) にも書かれていたと思いますし、一般的に言われていることっぽいです。 この論文の観測値ではSFは観測していません。このようにSFが無視できるほど小さい地域もたくさんあるのだと思います。 この論文では、モデルやパラメータの算出方法について概略が書かれており、勉強になりました。(2008年12月12日)

Barnett et al. (2005) Potential impacts of warming climate on water availability in snow-sominated regions. Nature, 438, 303-309.

気温の上昇によって、雪が降る地域の水資源量はどのように変化するのかをレビューした論文です。 なぜ、雨の変化ではなく、気温の上昇を取り上げたかといえば、雨の変化は非常に不確実性が高く、 どう変化するのかよくわからないからだそうです。英語は単語が難しく少し読みにくかったですが、内容的には非常に勉強になりました。 まず、この論文では対象とする地域(雪が降る地域)とはどのような地域かをピックアップしています。 基本的には45°よりも極に近い地域で振るのですが、例外がいくつかあります。それは、45°より赤道側でも山岳地域は雪が降ること、 逆に45°より極に近くても、乾燥地域だったり、暖流の近くだと降らないことです。 しかし、日本というのは、45°よりも赤道よりですが、平地でも雪が降ります。日本の豪雪というのは、世界的に見ても特殊な環境で起こっている ということが再認識できました。もう一つ印象に残っているのが、降雪の変動が土壌水分に与える影響です。 融雪が早くなると土壌水分量のピークも早くなり、その結果、夏には乾燥状態になりやすくなるということみたいです。 このように、気温の上昇が雪を変化させ、いろいろな影響を与えるというのは将来自分でもやってみたいなと思います。(2009年3月5日)

Komatsu et al. (2009) Changes in low flow with the conversion of a coniferous plantation to a broad-leaved forest in a summer precipitation region, Japan. Ecohydrology, in press.

岡山県の竜の口南谷試験地のデータを使って,針葉樹林と広葉樹林の低水の時の違いを調べています。 その結果、両者に大きな違いはありませんでした。 一方、低水の量と年流量には強い関係があることから、年蒸発散の違いがかなり一義的に低水の違いを生み出している可能性を示唆しています。 低水の量というのは、かなりの部分、年蒸発散量で決まっているというのは、おもしろいと思います。 森林の違いが流量に与える影響を調べる上でどういう研究が重要なのかということを暗示した結果といえるのではないでしょうか。(2009年3月8日)

Toba and Ohta (2008) Factors affecting rainfall interception determined by a forest simulator and numerical model. Hydrological Processes, 22, 2634-2643.

人工的にビニールで作られた樹木を用いて,様々な条件と樹冠遮断量の関係を室内実験で調べた研究です。 樹冠遮断量は,PAIや風速が大きくなると大きくなり,降雨強度が大きくなると小さくなるという結果が得られました。 ただ,図を見る限り,そこまで明確な関係というよりは,そういう傾向が見られたということみたいです。 また,モデルを使ってどの要素の変化が樹冠遮断量に大きく影響を及ぼすのかを調べています。 その結果,樹冠遮断量は,風が強ければ飽差の影響を強く受け,弱ければあまり影響がないようです。 モデルのあたりはあまり理解できませんでしたが,室内実験でいろいろな仮説を検証するのは,面白いなと思いました。(2009年3月30日)

Muzylo et al. (2009) A review of rainfall interception modelling. Journal of Hydrology, in press.

降雨遮断のモデルについてレビューした論文です。 SCI Journal の文献を踏査し、どういうモデルが考案されているか?、どのような地域で、森林で、どのようなモデルがよく適用されているか?について調べています。 モデルは、15個のモデルが見つかり、大きく分けるとCalder typeとRutter type, Gash typeに分けられました。 また、適用例では、ほとんどがRutterモデルがGashモデルで、それ以外のモデルの適用例は、ほとんどありませんでした。 ヨーロッパでもっとも適用例が多かったのですが、これは、15個のモデルのほとんどがヨーロッパで開発されているからと推測しています。 一方、どのような森林にモデルがよく適用されているかについては、地域によってずいぶんと明確な傾向が見ることができました。 ヨーロッパでは、針葉樹での適用例が多く、一方でアジアなどでは、熱帯雨林の適用例が多くなりました。 中緯度地域に多いにも関わらず、適用例が少なかった森林として落葉林や混交林がありました。なので、これらの森林ではさらなる研究が必要みたいです。 また、これまでのモデルでは、蒸発過程にほとんどPenman-Monteith式を用いていますが、必ずしもうまく推定できない場合も多いので、再検討する必要があるみたいです。 ゼミで文献紹介しましたが、あまり評判は良くないみたいですね...(2009年4月24日)

Boon (2009) Snow ablation energy balance in a dead forest stand. Hydrological Processes, in press.

虫害で森林が枯れてしまったサイトと森林が健全なサイト,そして開けた場所の3ヵ所で融雪過程の違いを調べている研究です。 森林が枯れてしまったサイトと健全なサイトを比較すると,日射量は前者の方が大きくなりました。 一方で長波放射は,枯れた森林の方がかなり小さくなりました。 顕熱,潜熱はあまり変わらないので,結局,融雪量は健全なサイト>枯れたサイト>開けた場所になりました。 モデルでも計算していましたが,モデルで計算していた理由はよくわからなかったです。 結果はある程度予想できるものですが,こうやって面白い現象で実際にデータをとるのはオリジナリティが出ていいと思いました。(2009年5月19日)

Ziegler et al. (2009) Throughfall in an evergreen-dominated forest staind in northern Thailand: Comparison of mobile and stationary methods. Agricultral and Forest Meteorology, 149, 373-384.

タイ北部のサイトで樹冠通過雨のサンプリング戦略について調べた論文です。 固定した4個の転倒マス式雨量計とサンプリングごとに移動させた20個の貯留式雨量計の2種類で計測しています。 なお,転倒マス式雨量計には3本の樋みたいなものが取り付けられています。 両方の方法とも最終的な樹冠遮断率はあまり変わらなく,転倒マス式雨量計で十分そうだと書かれています。 移動させるよりも固定して計測することの利点をかなり詳しく書いてあるのもこの論文の特徴かもしれません。 また,移動させて計測した180点について,その上のLAIと樹冠遮断率を比較していますが,明確な違いは見られませんでした。 ちょっと全体的にあまり理解できなかったのですが,風速の影響なども調べています。 この地域の降水量に占める樹冠遮断量の割合(樹冠遮断率)をレビューしてあるので、この地域で研究する人には便利な情報かもしれません。(2009年5月20日)

Katsuyama et al.(2008) Comparison of rainfall-runoff characteristics in forested catchments underlain by granitic and sedimentary rock with various forest age. Hydrological Research Letters, 2, 14-17.

花崗岩流域と堆積岩流域で流出特性の違いを調べた論文です。 花崗岩流域では,堆積岩流域と比較して,早い流出が少なく,base flowが多くなりました。 また,堆積岩流域では,林齢の異なる4流域でも比較しており,差が検出されていますが,それよりも花崗岩との差の方が大きくなりました。 このことは,流出量は一義的には地質によって決まっているというのを示す結果だと思います。 ちなみに,(風化)花崗岩では,土壌や基岩の中にたくさんの水を蓄えることができるそうです。 地質ごとに流出のメカニズムが違うのは面白いと思います。もっと勉強したいなと思いました。(2009年8月4日)

Buda et al. (2009) Factors influencing surface runoff generation from two agricultral hillslopes in central Pennsylvania. Hydrological Processes, 23, 1295-1312.

農地の斜面を使って,表面流を調べた研究です。 1 m×2 mの区域を区切りそこに集まった表面流を集めて計測しています。1つの地点で8つ設置しているのですが,そのうち4つは斜面上部があいた構造になっており, もし,斜面上部から表面流が流れてきたらキャッチできる構造になっています。また,土壌には飽和かどうか判断するセンサーも設置しています。 その結果,斜面上部があいているプロットと閉じているプロットで観測された量に大きな差はありませんでした。 このことは,表面流は上部から流れてきたのではなく,その大部分が1 m×2 mの区域内から発生したことを示唆しています。 また,各季節で異なる雨の降り方や雪を含むかどうかなどで表面流の発生が異なっているようでした。 結果はあまり明確でないものが多いのですが、ともかくたくさん計っているのはすごいなと思いました。(2009年8月4日)

Morikawa et al. (1986) Transpiration of a 31-year-old Chamaecyparis obtusa Endl. stand before and after thinning. Tree Physiology,2,105-114.

31年生のヒノキ林で間伐前後の蒸散量を比較した論文です。蒸散量の観測にはヒートパルス法を使っています。 気候学的な方法でも蒸散量は求めることができるが、それだと蒸発散のコンポーネントを分けることができないとイントロで書いています。 昔も今もイントロってそうは変わらないですね。 結果としては、間伐したら残った木の蒸散量は増加しましたが、林分スケールでは、24%減少しました。 なお、間伐で立木密度は、1750本/haから1325本/haに変化しています。 林分スケールでは、葉の量が、24%減少していました。それなので、蒸散量の減少は、葉量の減少によるものではないかと考察しています。 また、翌年の葉の量は、間伐直後と比較し増えており、このペースだと3年もすれば葉量は元にもどりそうだと書いてあります。 とても、興味深く読むことができました。(2009年10月21日)

Shaman et al. (2004) Are big basins just the sum of small catchments? Hydrological Processes, 18, 3195-3206.

アメリカで行われた研究です.大流域とその中に点在する小流域のデータを用いて,流域面積と低流量(low-flow)を比較しています. なお,これらの流域の傾斜など,流域面積以外の条件はほぼ同じことは予め調べています. その結果,流域面積が8km2より大きい流域では最も大きな流域と明確な差はみられませんでしたが,面積がそれ以下の流域では,最も大きな流域と比較し, 低流量が小さくなりました.これは,流域面積が3km2以上だと化学物質のスケール効果がおきないとした既往の文献とも一致します. もう少し面積の影響は大きいかなと思っていましたが,そんなもんなんですね.(2009年11月2日)

Deguchi et al.(2008) Measurement of evaporation from the forest floor in a decicuous forest throughout the year using microlysimeter and closed-chamber systems Hydrological Processes, 22, 3712-3723.

マイクロライシメーターとチャンバーシステムを使って林床面からの蒸発を調べた研究です。愛知県の落葉広葉樹林で行われています。 観測された林床面蒸発量は、日平均では0.20mm程度であり、既往の研究よりは少し少なめの値をとりました。 また、林床面蒸発におけるリターの重要性を示すような実験もいくつか行われています。 リターを飽和状態にして、土壌の上に置いておき、土壌とリターからの蒸発量を観測すると、はじめはリターからの蒸発が起こり、その後土壌から蒸発します。 ただ、土壌からの蒸発が始まるとリターへは、土壌から水が供給され、蒸発と供給される水の量がほぼ同じになり、平衡状態に近づくみたいです。 一般的には、林床面蒸発を計測するのは、この研究でも用いたマイクロライシメーターを用いた方法と、フラックス計測を用いた方法が用いられており、 チャンバーを使った方法とマイクロライシメーターを使った方法の観測値がほぼ同じであることを確かめることで、 連続観測できるという利点があるチャンバーを使った方法の有用性が示したところがこの論文の大きな売りになっている点だと思いました。 林床面蒸発の論文はほとんど読んだことありませんでしたが、丁寧に書いてあり読みやすかったです。(2009年11月12日)

服部(1983)ヒノキ林における地面蒸発量の季節変化 日本林学会誌,65,9-16.

林床面蒸発について、ヒノキ林の下でライシメーターを使って調べた研究です。 その結果、リターの被覆が薄くなってしまったため過大評価している可能性はあるものの、年降水量の8.9%が蒸発することがわかりました。 林内に蒸発計(パン蒸発計)も置いており、様々な森林測候所で観測された林内のパン蒸発量とも比較していますが、 年降水量に占める林内のパン蒸発量の割合は15%程度のようでした。 また、冬季は純放射以上に蒸発しており、地中からの熱量の重要性が示唆される結果になっています。 ヒノキ林という暗い環境でも思った以上に蒸発しているんだなというのが率直な感想です。(2009年11月12日)

Daikoku et al. (2008) Influence of evaporation from the forest floor on evapotranspiration from the dry canopy Hydrological Processes, 22, 4083-4096.

チャンバーを使って林床面からの蒸発を連続観測し、いろいろな気象因子などと比較している論文です。 林床面蒸発は、林分全体からの蒸散(dry-canopyの時の蒸発)の約20%を占めることが分かりました。 また、連続観測を行った成果として、夜間(日射が0の時)にも、それなりの量が蒸発していることがわかりました。 林床面蒸発の季節変化をみると、林床面蒸発は、林内に入ってくる日射量に大きな影響を受けていると考えられますが、 夜間にも蒸発が起こっているというのは、林床面蒸発は、日射だけでは説明できないことを示唆しています。 このような結果は、林床面蒸発を観測する上でGが重要である可能性を示すものかもしれません。 最後に、レビューをし、LAIとdry-canopy蒸発に占める林床面蒸発の割合との関係を示しています。 これを見ると、下層植生の有無に関係なく、そこそこきれいな関係が見られました。 このグラフを使えば、各地の林床面蒸発が大まかには推定できるかもしれません。(2009年11月15日)

Simonin et al. (2007) The influence of thinning on components of stand water balance in a ponderosa pine forest stand during and after extreme drought. Agricultral and Forest Meteorology, 143, 266-276.

半乾燥地で間伐に伴って、蒸発のコンポーネントがどう変化するのかを示した研究です。 上層の蒸散は、グラニエ法で、下層の蒸散+蒸発は、(少し苦しそうですが、)土壌水分の差し引きで求めています。 この研究は、間伐したプロットとしていないプロットの2つを比較することで、間伐の影響を調べています。 上層の結果は、他の論文に詳しく書かれているみたいですが、普通は、葉量の低下に伴って、間伐プロットの方が蒸散量が低下するのに、干ばつの年は、間伐していないプロットの方が、 蒸散量は小さくなりました。これは、極端な乾燥状態の場合、間伐していないプロットは競争が激しくなり、気孔を閉じるためではないかと考察していました。 一方で、下層のからの蒸散+蒸発は、干ばつの年もそうでない年も、間伐したプロットの方が大きくなりました。 その理由として、林床面からの蒸発が大きくなったのが、最も大きく、次いで、下層植生からの蒸散が増えたためではないかとしています。 一般的に、針葉樹での下層からの蒸散+蒸発には、大きく土壌水分と日射の透過量が影響すると書かれています。 なので、間伐試験をするような場合はこれらの要素をしっかり押さえることが重要になりそうですね。(2009年11月17日)

Vanclay (2009) Managing water use from forest plantations Forest Ecology and Management, 257, 385-389.

森林管理による水利用の違いを調べた研究はたくさんありますが、今後どういう方向で研究を進めていけばいいのかをしめしたレビューです。 これまでの研究は、主に流域水収支法を用いていましたが、流域水収支法では不十分な点がたくさんあるとしています。 そのため、流域水収支法を基に、森林管理に伴う水資源量の変化などが議論されていますが、それでは不十分ではないかと述べています。 (森林からの水資源量は、林齢や立木密度の関数になっているようです。) 特に、植生が変わることによって、そもそも雨の量が変わらないか、流域の降水の空間変動が変わらないかというのが主な疑問点のようです。 そのため、今後詳細な研究を行う必要があることを述べています。 特に、エッジ効果や疎度の変化、水利用効率などを調べる必要性を述べています。 オーストラリアの方ですが、流域水収支の結果をタテにして政策などが決められていることに疑問を持っているようでした。 流域水収支法ももちろんある程度見れることの限界はあると思いますが、様々な方法で研究を行って、整合性をある程度確かめられれないいのではないでしょうか。(2009年11月17日)

Kumagai et al. (2007) Sap folow estimates of stand transpiration at two slope positions in a Japanese ceder forest watershed. Tree Physiology, 27, 161-168.

斜面上部でグラニエ法を用いて蒸散量を算出した結果から、流域スケールで蒸散量を算出する際のサンプリングデザインについて調べた研究です。 熊本県の鹿北で行われています。樹種はスギで、同じ50年生ですが斜面の上下で大きさが随分違います。 蒸散量は、辺材面積に樹液流量を掛け合わせて求める事が出来ますが、 樹液流速は、斜面の上下で大きな差はありませんでした。また、それぞれの斜面内でも木のサイズと単木の樹液流速には大きな差はありませんでした。 一方、辺材面積は斜面の上下とも1本の回帰線から推定されることがわかったのですが、 その回帰線を作成する際、斜面どちらかの結果のみで作成していますと誤差が大きくなる事がわかりました。 このことから、流域スケールで蒸散量を算出する際には、辺材面積を正しく算出できるかがかぎになることが示唆されました。 林分スケール以上の蒸散量をスギで算出する際の注意点などが細かく書かれており、ためになりました。(2010年1月4日)

Kumagai et al. (2008) Transpiration and canopy conductance at two slope positions in a Japanese ceder forest watershed. Agricultran and Forest Meteorology, 148, 1444-1455.

上の論文(Kumagai et al., 2007)の続きの論文です。データが1年半と延び、新たな解析が加わっています。 一般的に、斜面上部の方が乾燥するため、土壌水分の抑制が起こりやすいとされています。 しかしながら、斜面上部で乾燥がおきた2005年と乾燥がおきなかった2006年ともに、斜面上部と下部の関係は変わりませんでした。 また、乾燥がおきたときにキャビテーションを起こさないように葉がコンダクタンスを調節するかを示した指標を他の樹種と比較した結果、 2005年、2006年ともに両斜面とも、一般的にいわれている値よりも低くなりました。 このことは、スギは乾燥が起こってもあまりコンダクタンスを調整しない、つまり乾燥状態でも気孔を開きっぱなしにしていることを示唆しています。 乾燥のある年とない年の2年計測することで、このようなことがわかるのはおもしろいですね。(2010年1月4日)

丹下(1987)19年生スギ人工林の斜面上部,中部,下部における年蒸散量の推定 東京大学演習林報告,76, 177-196.

ヒートパルス法を用いて3プロットの蒸散量算出を試みた研究です。 当時の研究なので、でてきた真値というのはそこまで信頼性はないと思いますが、その過程の結果は興味深いです。 斜面下部のプロットのみ立木密度は他のプロットの半分程度と小さいのですが、ヒートパルス法で求めた樹液流速は、 他のプロットと比較して大きくありませんでした。(むしろ小さいくらいでした。) このことは、立木密度と樹液流速にはあまり関係がない(つまり、立木密度が小さいほうが樹液流速が大きくなるということもない)ことを示唆していると思います。 また、土壌水分による蒸散の抑制も起きなかったようです。このことは、上の研究(Kumagai et al. 2007, 2008)と同様の結果です。 いろいろなことがこの論文の結果から推察できるような気がして興味深かったです。(2010年1月4日)

Levia and Frost (2006) Variability of throughfall volume and solute inputs in wooded ecosystems. Progress in Physical Geography, 30, 605-632.

樹冠通過雨とその水質についてレビューした論文です。非常に多くの論文の結果から論文が構成されています。 私は、量に関する部分のみしか読まなかったのですが、それでもかなり勉強になりました。 特に樹冠通過雨の空間的ばらつきやサンプリングデザインについては、かなり丁寧に解説しています。 また、気象要素が樹冠通過雨のばらつきに与える影響を調べた研究はまだまだ少ないことも書かれていました。 モデルについても触れられており、遮断モデルはたくさんあるけど、樹冠通過雨のモデルは非常に少ないことが述べられています。 遮断の論文を書く際にもう一度読んでみようと思います。(2010年1月4日)

Holwerda et al. (2010) Rainfall and cloud water interception in mature and secondary lower montane cloud forests of central Veracruz, Mexico. Journal of Hydrology, 384, 84-96.

メキシコで雨の遮断と霧の遮断を観測した論文です.霧の遮断は,霧のない時につくったモデルで予想される遮断量と観測された遮断量の差で算出しています. この発想は面白いなと思いました. ここでは,霧は,主にdry seasonに起こるのですが,霧の遮断は,dry seasonの雨の6%,年降水量のわずか2%以下にすぎませんでした. 成熟した林と二次林の2つで計測しているのですが,この点については,どちらの林でもほぼ同じでした. 一方で,年遮断率は,成熟した林の方が,2倍程度大きくなりました.2つの林で,canopy strage capacityが大きく違うので,これのせいではないかとしています. ただ,canopy strage capacityの違いは,LAIの違いだけでは説明できず,バイオマスのせいかも...と述べています. 英語も分かりやすく,内容もしっかりかけていて読みやすかったです.論文の書き方としても勉強になる気がします.(2010年10月26日)

Carlylr-Moses et al. (2010) Modelling rainfall interception loss in forest restoration trials in Panama. Ecohydrology, 3, 272-283.

パナマにおいて,よく造林される5樹種で樹冠遮断を計測し,その計測値にLiuモデルを適用することで,それぞれの樹種における モデルの精度の確認や,パラメータ決定方法の検討を行っています.結果を要約すると,モデルの出力値が,overestimateされているサイトとunderestimateされているサイトの両方がありました. これについては,幅広い知見で考察されています. また,モデルの感度分析をしており,蒸発速度や降雨強度が樹帯に保持できるキャパシティーと比較し,モデルの出力値に大きな 影響を及ぼすことを示しています.この研究で特に,勉強になった点は,(単木の)蒸発速度や幹のキャパシティーを算出する関数がされていたことです. このような関数があれば広域のモデル化などに便利だなと思いました. この論文は,データの期間がとても短く,観測データ自体は苦しいところもあると思いますが, 樹冠遮断やそれに関連する知識が凝縮されており,読んでいて非常に勉強になりました. また,久しぶりに読んだ遮断の論文はとても楽しく,自分が遮断という現象を好きなんだなということを再認識しました.(2010年12月29日)

Ganatsios et al. (2010) Water yield changes as a result of silvicultural treatments in an oak ecosystem. Forest Ecology and Management, 260, 1367-1374.

ギリシアで森林管理が水収支に与える影響を調べた研究です. モデルを使って,水収支全体を若干考察していますが,実際の観測は,樹冠遮断がメインです. basal areaで50パーセント間伐,皆伐の2つの施業を行ったサイトとコントロールを比較しています. その結果,遮断率は,皆伐区で1.8パーセント,間伐区で6.7パーセント,コントロールで9パーセントとなりました. このことから,森林管理によってわずかながらにwater yieldが増えたことになります. しかし,この論文を読む限り,ギリシアではよっぽど水に困っているみたいで,water yieldを増やすための森林管理を推奨しています. 一方で,管理方法(どのような機械を使って作業するのか)によって浸食の度合いが異なったりするので,注意が必要であると述べています. どのようにして森林管理を行ったのかが詳しく書かれており(何人で行ったのか,何の機械や動物を使ったのか),林学者の仕事だなぁと思いました.(2010年12月29日)

Komatsu et al.(2011) Increaseing annual runoff-broadleaf or coniferous forests? Hydrological Processes, in press.

一般的にこれまで言われてきた,針葉樹の方が広葉樹よりも蒸発散量が多いということが,どのようなところでは成り立って, どのようなところでは成り立たないかというのを調べた研究です. その結果,広葉樹が落葉でなおかつ冬に雨(もしくは,雪)が多いところ(アメリカ合衆国)では,成り立つものの, 広葉樹が,常緑の場所の場所(ニュージーランド)や,冬に雨が少ないところ(日本)では,成り立たないということが, 伐採試験をした流域研究をレビューすることで,示されました. また,このような違い(地域による違い)がでる要因として,樹冠遮断量の違いを挙げています. つまり,アメリカのような場所だと,冬季に(落葉の)広葉樹と(常緑の)針葉樹の間で,樹冠遮断量が大きく違い, これが針葉樹と広葉樹の蒸発散量の違いに大きな影響を及ぼしている一方で,日本だと冬に雨が少ないので,ニュージーランドでは広葉樹が常緑なために, 針葉樹と広葉樹の年樹冠遮断率にほとんどに大きな差がなく,そのために蒸発散量でも違いがなかったという仮説を立てています. このことも樹冠遮断量のデータをレビューすることで,確かめています. この論文では,ある地域の常識が必ずしも他の地域では適用できないということが最後に強調されています. 徹底的なレビューで,仮説を検証しているため,とても説得力があるなと思いました.このようなところは,ぜひ見習っていきたいなと思います.(2011年1月3日)

Varhola et al. (2010) Forest canopy effects on snow accumulation and ablation: An integrative review of empirical results. Journal of Hydrology, 392, 219-233.

森林特性が,森林内の積雪量に与える影響をレビューした論文です.まず,森林内の積雪量に影響を及ぼす可能性のある要因を列挙し, その後,レビューで得られたたくさんのサイトのデータをまとめることで,森林内の積雪量に最も強い影響を及ぼす要因を調べています. その結果,それ自体はいろいろな定義で用いられているものの,forest coverが森林内の積雪量ならびに融雪速度を最も強く説明できる要因 であることがわかりました.また,この関係を使って作ったモデルは,他のサイトで得られたモデルと大きな違いはありませんでした. このことから,この研究で得られたモデルは,森林の変化が積雪量に与える影響を調べる上で有用であると考えられます. 後半部分の結果は,このような感じですが,前半部分は,これまでの研究がとても丁寧に,またわかりやすくまとめられており,勉強になりました. 雪の降る北陸本線の中で論文を読んだので,何となく,雪の雰囲気を感じながら読めてよかったです. また,単なる感想ですが,文章を読んで,著者の物事の考え方は,小松さんと近いような気がしました.(2011年1月12日)

Granier and Breda (1996) Modelling canopy conductance and stand transpiration of an oak forest from sap flow measurements. Annals of Forest Science, 53, 537-546.

樹液流速の観測値を使って,群落コンダクタンスのモデル化を行った論文です. 群落蒸散を日射と飽差の関数にすることで,群落コンダクタンスの最大値を逆算しています. さらに,群落コンダクタンスの最大値にLAIと土壌水分で関数化された値を入力することで,群落コンダクタンスを算出する式を提案しています. 土壌水分の抑制を受けず,日射がある程度大きいとき,群落コンダクタンスは,LAIとほぼ線形になりました. さらに,乖離率Ωを計算したところ,0.1前後と小さくなったため,VPDと蒸散の間で強い関係がみられているのではと考察しています. この論文は,4年間にわたってデータが取られており,途中で間伐も行われています. 森林構造の変化に伴う蒸散量の予測などを行う場合,このようなモデルが参考になるのではないでしょうか.(2011年1月21日)

Granier et al. (1996) Transpiration of natural rain forest and its dependence on climatic factors, Agricultral and Forest Meteorology, 78, 19-29.

フランス領ギニアの熱帯雨林の2サイトで樹液流計測を用いて蒸散量を観測し,その環境応答を調べた論文です. 1日の群落コンダクタンスの変化(7-10時の間で上昇して,その後緩やかに減少)やΩの変化を調べています. その際,空気力学的コンダクタンスは,風速の関数としています. また,Ωは日中で0.2程度と大きくないため,Penman-Montieth式の放射項を消し,移流項から群落コンダクタンスを算出し, 日射,飽差との関係を調べたところ,群落コンダクタンスと日射には明確な関係は見られませんでしたが,飽差とは明確な関係が見られました. 1つのサイトでそれを用いてモデル化し,他方のサイトの蒸散量と比較したところ,モデルは精度良く蒸散量を算出できることがわかりました. 群落の話をする前に,DBHと辺材幅に関係がないことなど,単木の話がのっており,それも非常に面白かったです. 特に面白かったのは,遷移後期種の方が,パイオニアより樹液流速が速かった点です.イメージ的には逆かなと思っていましたが,へーと思いました.(2011年1月22日)

McJannet and Vertessy (2001) Effects of thinning on wood production, leaf area index, transpiration and canopy interception pf a plantation subject to drought. Tree Physiology, 21, 1001-1008.

オーストラリアの5年生ユーカリ林で,間伐強度を3種類設定し,間伐強度の違いが樹木に与える影響を蒸散や生存率など様々な視点から見ています. この研究の背景として,塩がたまりやすい土壌で行われていること,年降水量の変動が大きく,極端な乾燥もしばしば起こる場所で行われていることがあげられます. また,ユーカリは,少々の乾燥であれば大丈夫ですが,大きな乾燥の影響を強く受けるため,大きな乾燥の影響が小さくなるような施業が求められているようです. 結果は,間伐率が小さいサイトでは,間伐後も密になっているので競争が激しく,大きな間伐の影響を受けやすい一方で, 間伐率が大きいサイトでは,競争も激しくないため,枯死する木の数は少なく(ただし,率にすると大きいですが),また成長率も高いことがわかりました. また,間伐率によって遮断蒸発に大きな差はなく,蒸散量も間伐率と明確な関係はありませんでした. このことから,この研究では間伐率の高い間伐(50%)を推奨しているみたいです. また,エッジ効果も明確に表れており,エッジに近い木の方が中心に位置する木より有意意にDBHが大きくなりました. なので,うまくエッジ効果を利用するように植栽の際,列の幅も小さくすることを提案しています. このように,包括的に施業方法を提案できるのは,すごいなと思います.日本では,このように間伐率によるきれいなコントラストは見れないような気もしますが, いつか,徹底的に調べてみたいなと思いました. 余談ですが,蒸散(樹液流計測)は実験デザインに問題があったかもと述べています.センサー数が少ないからでしょうか...(2011年1月23日)

Aboal et al. (2000) Effects of thinning on thorughfall in Canary Islands pine forest-the role of fog. Journal of Hydrology, 238, 218-230.

カナリア諸島の48年生のマツ林で,間伐強度の違いによる樹冠通過雨量の違いを調べた研究です. 間伐後9年たっている林で,コントロール4プロット,弱度間伐(BAの15%)3プロット,強度間伐(BAの56%)3プロットで調べています. この地域の特徴は,霧が頻繁にでることです.なので,観測結果では,すべてのプロットで,降水量より多い樹冠通過雨量が観測されました. 地形の影響と樹冠構造の影響どちらが樹冠通過雨量に大きな影響を与えているか調べたところ,地形の影響も若干考えられるものの,樹冠構造の影響の方が大きいことが予想されました. また,間伐強度の違いで樹冠通過雨量を比較したところ,ほとんどのイベントで弱度間伐>コントロール>強度間伐の順番になりました. これは,これまでの研究から予想される結果(強度>弱度>コントロール)と異なっていました. その理由として,霧の影響が大きいこと,これまでの研究と違い,間伐後しばらくたった後(9年後)観測したことの2つが主に考えられました. ちなみに,様々な樹冠構造と樹冠通過雨量の関係を調べたところ,樹高,BA,LAIとTfには有意な正の相関がありました. この研究は,これまでの研究がしっかりとレビューされているので勉強になりました.特に,間伐率と樹冠通過雨量,遮断蒸発の関係などについてよくレビューされています. レビューした結果,明確な関係は得られていないということみたいですが...(2011年1月23日)

Murakami (2007) Application of three canopy interception models to a young stand of Japanese cypree and interception in terms of interception mechanism. Journal of Hydrology, 342, 305-319.

熱収支モデル,降雨強度から遮断量を推定するモデル(DOCIORI),revised Gashモデルの3つのモデルの適用性を調べることで, 遮断現象が熱収支で説明可能か,それとも飛沫蒸発現象を考慮しないと説明できないかということを調べています. 検証に使ったデータは,若いヒノキ林で,2年間のデータを使っています.両年の遮断率は19.1%,18.9%で,普通かなという印象です. 3つのモデルのうち,熱収支モデルのみが熱収支のみで蒸発が説明される構造であり,その他の2つは,熱収支と飛沫蒸発の2つの現象から蒸発が起こる構造となっています. 結果,熱収支モデルのみが,降水量の多いイベントで大きな過小評価が見られました. モデルのパラメータを少し,変化させてみても,この過小評価というのは変わりませんでした. つまり,熱収支のみの蒸発現象のみでは,遮断蒸発が説明されないことが示唆されています. このことを補完するために,文献レビューに基づいて,以下の2つのことを調べています. 生データが利用可能な文献でも降水強度(もしくは量)と蒸発強度の関係を調べたところ,両者に正の関係が見られました. また,各地の降水強度と蒸発強度の関係を調べたところ,これらにも,正の関係が見られました. この村上さんの理論は,世界中で遮断を研究している人たちに強いインパクトを与えている気がします.自分自身でも,何か実証するような解析をしてみたいです.(2011年2月14日)

Staelens et al. (2008) Rainfall partitioning into throughfall, stemflow, and interception within a single beech (Fagus sylvatica L.) canopy: influence of foliation, rain event characterictics, and meteorology. Hydrological Processes, 22, 33-45.

単木ブナにおいて,2年間の樹冠通過雨,樹幹流,遮断の変動を調べた研究です. 落葉樹なので,落葉と着葉があり,その影響と気象の影響の両方を調べています. 年間ではTfが71%,Sfは8%,遮断が21%でした. 落葉期と着葉期で分けると,遮断の落葉期は10%だったのに対し,着葉期は31%でした. また,net precipitationに占める樹幹流の割合は,落葉期と着葉期で大きく変わりませんでした. イベントごとの細かい解析もしていますが,面白いなと思ったのは, 着葉期では,降水量が増えるにしたがって,遮断量は増えますが,落葉期では,降水量が増えても遮断量は増えませんでした. なんでなんでしょうね. その他の気象要素との関係も統計モデルを使って使って調べていますが,雨の量と着葉・落葉ほどは大きな影響を与えていないようでした. とても,色々な現象を丁寧に説明していて,とても勉強になります.落葉樹の場合,落葉期と着葉期で色々と比較できるのでおもしろいですね.(2011年5月10日)

Wallace and McJannet (2006) On interception modelling of a lowland coastal rainforest in northern Queensland, Australia. Journal of Hydrology, 329, 477-488.

オーストラリアの熱帯雨林で遮断を計測し,モデリングの方法について検証した論文です. モデルは,revised Gashを使っています.様々なパラメータをどのように算出するのがベストか検討しています. 特に雨の強度Rについては,詳しく検討しており,何時間で降雨を分けたらいいのか,Rを算出する際に,小さい雨は除去した方がいいのか,といったことが調べられています. 結果,2 mm以下の雨を除去しないとRの値が大きく変わること,また,降雨を分けるのは4hが妥当であることを示しています. また,誤差が小さくなるようなSとEの組み合わせも検証しています. そのように得られたEは,Penman-Monteithから得られたEよりも大きなものでした. このことから,40-70%,additionalなエネルギーがありそうだと考察しています. モデリングをする人にとっては,とても勉強になる論文だと思います.(2011年5月10日)

Genet et al. (2008) Root reinforcement in plantations of Cryptomeria japonica D.Don: effect of tree age and stand structure on slope stability. Forest Ecology and Management, 256, 1517-1526.

中国の四川省において,林齢の違う3林分(9年生,20年生,30年生)で根の計測を行い,また,それを用いて安全率を計算することで, 森林特性の違いが,斜面安定に与える影響を調べています。(先日,台湾でスギをみましたが,中国にもスギがあるんですね。) 根の量を調べたところ,9年生が一番多く,次いで,30年生,20年生という順になりました。 また,根は表層に集まっており,深くなるほど少なくなる傾向,木から離れるに従って少なくなる傾向は,その林分でも見られました。 このような計測結果を用いて,算出した安全率(の増加)は,9年生,30年生,20年生の順になりました。 このようになった結果について,既往の文献と比較することで,非常に深く考察されており,勉強になりました。 この文献で引用されている論文も読んでみようと思います。(2011年11月26日)

Nanko et al. (2008) Effect of canopy thickness and canopy saturation on the amount and kinetic energy of throghfall: An experimental approach. Geophysical Research Letters, 35, L05401.

ヒノキを実験施設内に移植し、人工降雨を降らして、その樹冠通過雨と運動エネルギーの空間的ばらつきを 調べた研究です。実験は、葉を徐々に落としていくことで、樹冠の葉量を4段階に調節して行っています。 雨を降り始めた直後と樹冠が飽和した後で比較すると、樹冠通過雨の空間的ばらつきは、 降り始めた直後の方が大きくなっていました。 また、葉量が樹冠通過雨量に与える影響は、降り始め直後では、顕著に見られましたが(葉が少ないほうが樹冠 通過雨量が大きくなる)、樹冠が飽和した後は明確ではありませんでした。 大きな雨粒の量は、降り始め直後よりも、飽和した後の方が大きくなっていました。 このほかにも、雨滴の速度やエネルギーなどを、飽和前後、樹冠の違いで比較しています。 話の本筋とはあまり関係ないようですが、幹の近くに集中滴下点があり、それは、 樹冠が一番疎なときのみに見られるというのもおもしろいなと思いました。(2013年1月30日)

Levia et al. (2013) Measurement and modeling of diameter distributions of particulate matter in terrestrial solusions. Geophysical Research Letters, 40, 1317-1321.

ドイツのヨーロッパブナで降水,樹冠通過雨,樹幹流,有機層(中の水)に含まれる粒子物質(PM)の直径階別の分布を調べた 研究です。落葉期と着葉期の両方で計測しています。どのサンプルでも直径階の中央値は3.0マイクロメートルくらいになりました。 今後は,その粒子がどのような成分なのか,分析していくそうです。AGUでLeviaさんに会って,論文を送ってくれたので,読んでみました。 私にとっては馴染みがない分野ですが,重要性のようなものは伝わってきました。福岡は今,PM2.5の上昇がとても問題になっているので, それが植物や生態系機能に与える影響を研究しても面白いかもしれません。(2013年12月18日)

Kumagai et al. (2014) Estimation of annual forest evapotranspiration from a coniferous plantation watershed in japan (1): Water use components in Japanese cedar stands. Journal of Hydrology, 508, 66-76.

熊本県の鹿北試験地で蒸発散の各コンポーネントを計測した論文です。蒸散量の計測は,グラニエ法を用いて3プロットで行いました。 それぞれのプロットの樹液流速には大きな差がなく,辺材面積の違いによって,蒸散量の違いが生み出されていました。各月の遮断蒸発量は, 降水量の変動によって規定され,各月の遮断蒸発率には,大きな違いはありませんでした。 ポロメーターの計測値とモデルから算出した下層の蒸散量は,各月で大きな違いはありませんでした。 なお,年蒸散量,遮断蒸発量,下層の蒸散量は,359.3, 425.2, 126.9 mmとなりました。 年蒸発散量(911.4 mm)は,以前提案された気温から蒸発散量を推定する式(Komatsu et al., 2008)とよく合致していました。 また,成長期の月ET/Pは,ほぼ一定であることから,PがETを決める主要因ではないかと推察しています。 蒸発散量を推定する上での遮断蒸発の重要性を示しているとも言えそうな論文ですね(2013年12月18日)

Levia et al. (2014) Differential stemflow yield from Europian beech saplings: the role of individual canopy structure metrics. Hydrological Processes, in press.

比較的小さいヨーロッパブナの木を使って、各木のstemflowの違いを生み出す要因を調べた研究です。 stemflowの計測はイベントベースで行っており、多くのイベントで行っている訳ではありませんが、 樹木の形態についてとても徹底的な計測を行っています。一次枝、二次枝の数、枝の数、枝の角度などの計測を行っています。 10本の木で計測を行っているのですが、クラスター解析を行って、stemflowの大小で2つのグループに木を分けました。 そして、2つのグループの樹冠の特徴の違いを比較することで、stemflowの生成に影響を与えている因子を特定しようと試みています。 その結果、葉っぱのバイオマスに対する幹や枝のバイオマスの割合が両者で大きく異なり、 stemflowが大きい木では、葉っぱのバイオマスに対して幹や枝のバイオマスの割合が大きいことがわかりました。 また、stemflowが大きい木では、幹が垂直に近く、バイオマスが多く、枝が多いという特徴も見られました。 stemflowの生成要因は、まだまだわかっていないと思いますが、このような徹底的な計測が積み重なることで、 だんだんと見えてくるものもありそうでワクワクします。(2014年1月5日)

Song et al. (2011) Carbon sequestration by Chiniese bamboo forests and their exological benefits: assessment of potential, problems, and future chattenges. Environmental Review, 19, 418-428.

主に中国の竹林についてレビューした論文です。基本的には、竹林に対して、好意的に書かれており、 竹林が生み出す利益について色々な視点で述べています。特に炭素蓄積については、他の森林よりも大きく、 竹林の土壌にも炭素が多く含まれていることが述べられています。その他、土壌侵食量が少ないこと、 竹林によって維持されている生態系があることが述べられています。意外だったのは、竹林の遮断蒸発率が他の森林と比較して小さい と書かれていたことです。中国語の論文の引用なので、情報にアクセスすることは難しいと思いますが、 日本とは異なる結果なので、気になりました。また、中国でも、竹林が拡大している箇所があるようで、 地球温暖化の影響などを指摘しています。最後に、他の途上国でも、竹林を植えて炭素固定を増やすことを提案しており、 とても思い切った提案だなと思いました。(2014年1月12日)

Zimmermann et al. (2013) Changes in rainfall interception along a secondary forest succession gradiant in lowland Panama. Hydrological Earth System Sciences, 17, 4659-4670.

熱帯林で植生の遷移と樹冠通過雨量との関係を調べた論文です。 遷移段階の異なる20プロットで樹冠通過雨量を計測し、樹冠通過雨量の変化、 樹冠通過雨量が何によって説明できるのかを調べています。 なお、樹幹流は計測しておらず、樹冠通過雨から遮断蒸発量を算出しています。 その結果、植生遷移が進むに従って、樹冠通過雨量は減少していましたが、 この傾向が見られたのは、遷移開始後10年目くらいまでで、それ以降は、 ほぼ一定となっていました。 このように、遷移のかなり早い段階で、成熟林と同じ樹冠通過雨量になっていました。 様々な植生パラメータと樹冠通過雨量との関係を調べているのですが、 全胸高断面積合計(BA)に占める小さい木のBAの割合が最も相関が高くなりました。 このようなパラメータを使うのは面白いと思いました。 また、考察で、樹冠通過雨量の低下と浸透量の増加、遷移段階でとちらの進行が早いかを 比較しているのですが、遷移が進むにつれて浸透量が増加するという観測データは、 自分自身の何かの研究の解釈にも使えそうだなと思いました。(2014年2月22日)

Kang et al (2005) Winter wheat canopy interception and its influence factors under sprinkler irrigation. Agricultural Water Management, 74, 189-199.

秋まき小麦の遮断蒸発量を調べた研究です。正確には,降雨中(灌漑中)の蒸発量は無視しているので, 樹冠貯留量Sを調べた研究です。LAIの季節変化とSの変化は概ね一致しており, LAIとH(高さ)からSを推定する式を構築しています。また、その他にも、 雨滴粒径が大きくなるほどSが小さくなる傾向,風が強くなるほど,Sが小さくなる傾向を見出しています。 ただし,風速がSに与える影響は,雨滴粒径やLAIなど,他の要素と比較するととても小さいようです。 農地でも遮断蒸発の研究は結構あるんですね。降水の多い日本ではあまり重要ではないかもしれませんが, 灌漑を行うところでは,重要なんですね(2014年3月25日)

Llorens and Gallart (2000) A simplified method for forest water storage capacity measurement. Journal of Hydrology, 240, 131-144.

モデルを使って遮断蒸発を予測する際に、必要不可欠なパラメータである樹冠貯留量Sについて調べた論文です。 著者らの実験と文献踏査の両面から、Sについて考察しています。 文献踏査から、密度とSには明確な関係が見られないことがわかりました。 著者らが5プロットで行った実験では、樹冠通過雨率と密度、BAには明確な関係が見られず、 樹冠通過雨率は、樹冠の閉鎖率と明確な関係がありました。樹冠通過雨率とSにもゆるやかな関係が見られました。 直接的に算出した葉のSは、枝や幹のSと比較して小さいことから、 Sを考える上での幹や枝の重要性を指摘しています。さらに、文献踏査の結果から、 葉のSと比較し、幹や枝のSの方がばらつきが大きいことからも、その重要性を指摘しています。 また、風がある状態とない状態でのSを比較しているのも興味深いです。 直接的な方法と間接的な方法を比較することで、間接的な方法がSを過小評価している可能性も示しています。 Sについて、徹底的なレビューと興味深い実験から、様々な可能性を示しており、 とても示唆に富んだ論文だなと思いました。(2014年3月25日)

Fransen et al. (2001) Forest road erosion in New Zealand: Overview. Earth Surface Processes and Landforms,26, 165-174.

ニュージーランドにおける林道からの土壌侵食を取り扱った研究をレビューしたものです。 ニュージーランドでは、土壌侵食が原因と思われる魚の死をきっかけに、林道の侵食が研究されるようになったそうです。 プロットスケールの研究に基づいて、林道の建設から時間がたつにつれて侵食量が減少すること、 路面よりも切土面や盛土面からの侵食が多いことを示した上で、 でも結局は、林道によって引き起こされた崩壊によって引き起こされる土砂移動量の方がとても多いから、 定常的な路面侵食よりも、突発的な大雨で引き起こされる崩壊を考える方が重要であると結論づけています。 路面の侵食量は、自然斜面からの侵食量とあんまり変わらないのではないかとも予想しており、 とても示唆に富んだ総説だと思います。この総説のように土壌侵食を考える上で何が大切なのか、 一歩引いた目で見るのはとても重要だと思います。(2014年4月30日)

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